コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.94 )
日時: 2011/08/12 19:29
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: d9npfmd5)
参照: http://www.youtube.com/watch?v

第二十七話『プリント』


次の日。


「——珠紀壱、これ配ってくれるか?」
「……え」


社会の授業が始まると共に、先生は壱にそう頼んだ。
壱は驚いていたが、そのプリントを引き受ける。
そして先生と何かを話してから、配り始めた。


壱一人で配ってるので、必ずもらえるよね。
ありがとうって、ちゃんと言えるかな?
そう思いながら、心の中で何度も『ありがとう』の練習をする。


「……っ」


壱は、こっちへ向かってきた。
壱は私の後ろにまわり、乙葉にプリントを渡す。
きっと班ごとにプリントがまとまってると思うから、間違いなくそろそろ私の所にも来る。
本当に些細な場面なのに、こういう時異常にドキドキするんだ。


「おう、壱、ありがとー」


よし、犬ちゃんが配られた。
他の私の班の人も皆配られてるから、次は私……。





















——と、思いきや。
壱は華麗に私を通り過ぎて、横の原田くんの方へ行ってしまった。
えぇぇぇぇ、あれ?
私以外の班員、皆プリント持ってるよ?
え、な、なんで!?


「——水城ー」


疑問に思っていると、疾風の声が聞こえてきた。
顔を上げて見れば、前から二番目の席の疾風が、プリントを振り回している。


「はい」


そしてそのプリントを私に渡した——……ってなんで!?
なんで他の人のは壱が配ってたのに、私だけ疾風なの!?


そんな大きな疑問が、私の頭の中に残った。


**


時間が経ち、休み時間。
突然係から配られたプリントが前の人からもらったので、私は後ろに配ろうとした——が。
後ろの乙葉が居なくなっていたので、立ち上がって後ろの男子に届けようとした。


しかし、誤ってその人にあげるプリントを落としてしまったのだ。


「……あ〜、ごめん」


私は男子に謝る。
……その時に、異様な視線を感じた。
顔を上げてみると、龍と目が合った。


「…………」


龍と私は、目を合わせたまま固まった。
逸らすに逸らせない、この威圧感。
どうすればいいかわからずじまいでいると、龍は笑み浮かべた。


「……なんだよー」
「え、な、そ、そっちこそ、何?」
「なんだよなんだよー」


龍はそう言いながら、視線をずらす。
その視線が、少しだけ壱の方を見た気がした。
そこでやっと龍から目を逸らすことが出来たので、私は前を向く。
すると、チラリと壱が視界に入った。


壱は、龍の方を見ていた。
なんだか壱の方を見れなくて、表情とか何話してるとか——。
私には、よくわからなかった。