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Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.97 )
日時: 2011/08/16 23:09
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: zRrBF4EL)
参照: http://www.youtube.com/watch?v

第二十八話『叶汰の言葉』


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放課後になり、私はゴミ箱を持って廊下を歩いていた。
今日、私の班は罰トイレ掃除を喰らったのだ。
もう壱も帰っちゃったし、愛奈も由良も優もいないし——。
つまんないの。そう思いながら玄関へ向かっていた。


「……あ」


玄関につくと、教室のゴミ箱を持った叶汰が居た。
そこで叶汰と目が合い、叶汰はゴミ箱を床に置く。


「……」


目を逸らし、私はゴミ捨て場に近づく。
ちょうど叶汰の横に並ぶような形となった。
ゴミ箱の袋の音だけが響く、静かな玄関。
今の時間帯だったら、いつも騒がしいのになぁ……。
こういう沈黙、昔から苦手だ。


そう思いながら、素早くその場から立ち去ろうとした。
しかし、


「——ねぇ」


叶汰に呼び止められ、私の足は止まる。
ゆっくり振り返ると、叶汰はゴミ箱を片手で持ってこちらを見ていた。
——身長、大きくなったなぁ……。
最初は、私と似たり寄ったりの身長だったのに。
やっぱ、男の子だよねぇ〜……。


短期間で終わった、恋。
こっちの学校に来て、初めて好きになった人。
……好きだった、人。


「……誠とどうなったの?」
「え?」


叶汰はそう言い、私に近づいた。
私は一歩後退り、叶汰を見る。
……まさか、叶汰からそんな言葉が出るなんて、思ってもいなかったから。


「どうなった?」
「え、どうって——」
「どうにもなってない?」
「う、うん」


私は頷いて、再び叶汰に背を向けて歩き出そうとした。
しかし、叶汰は先に私の前に回り込んで顔を見る。
……話は、まだ終わってないって訳か……。
私は足を止め、叶汰を見る。


「誠に告白されたんでしょ?」
「告白っていうか……、まぁ……」
「OKすんの?」


あっさりと叶汰の口から出る、その言葉。
そこは、触れてほしくない話題だった。
私は叶汰から目を逸らす。


「それ……は……。——ちょっと、出来ない……かな」
「なんで?」
「いや、なんでっていうか……。とにかく、それは出来ない」


私は壱が好きだし。
林田はいい人だとは思うけどさ、だからこそ——。
だからこそ、軽い気持ちでOKして林田を傷付けたくない。


「——誠、大分お前にハマッてるよ?」
「はい?」


今、何て言った?
叶汰の衝撃発言に、私は目を丸くした。
叶汰と言えば、笑みを浮かべている。


「……そんなハマる要素、私にはないと思うけど……」


私は足を進めて、そう呟いた。
変人だし、顔も可愛くないし、性格だって悪いし。


「あんなにお前を愛してくれる人、他にいないと思うけど」


叶汰は無邪気な口調でそう言い、私の横を歩いた。
私は予想のしていなかったその発言に動揺し、早歩きになる。


「……そ、そんな、も、もったいないよ、私なんかに!!」


私はそう言い捨て、逃げるように走った。
ゴミ箱があったから走りづらかったけど、なんとか大丈夫だ。
後ろを見れば叶汰も追いかけてきてないし、大丈夫。


「……っ」


教室を過ぎたところで、私は走るのを止めた。
好きでいてくれるのは、嬉しい。
こんな私に告白をしてくれたのも、嬉しい。
嬉しい、けど——……。


——やっぱ、私は壱が好きだ。
どんなに接点がなくても、壱が好き。


ちゃんと、はっきりしなきゃいけないな……私。