コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: +Rainbow Light Music+ ( No.30 )
- 日時: 2011/08/01 12:31
- 名前: 苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: xe6C3PN0)
- 参照: ▼ 受験とかいらない、でも高校ゎいきたいな
第九話『過去の因縁』
「……里子は……森沢に……」
健は、なにかをためらっているような感じがした。
緊迫とした空気が漂う。
「……お、男を、盗られたんだよ」
男……。
——中2の頃、里子には他中の人に片思いをしていた。
その頃は、普通に江実とも仲がよかったし、里子も毎日楽しそうだった。
けど、ある日……。里子は見てしまったのだ。
江実が、自分の片思いしている男と、一緒に歩いている所を。
手を繋いで、楽しそうに喋っているところを。
「もちろん、森沢は里子の気持ちを知っていた。それを承知のうえで、あいつは……」
「も、もういいよ……でも、里子、そんなこと一言もいってなかったじゃない!!」
凛子が、目を極限にまで見開いて、そう叫んだ。
「……多分、言いたくなかったんだと思う。心配かけたくなかったんだな、きっと。
でも、俺はあいつが元気ないのに気付いて、無理やり聞き出したんだ。
今まで言うないわれてたけどさ……」
江実……男を盗るなんて、酷いよ。
そりゃあ、里子だって怒るよ。里子があんなに恨むのも、わかるよ。
「……っ」
「桜!?」
私は、いつのまにか走っていた。屋上をあとにして、階段を駆け下りて、食堂へ向かった。
確か、江実はここで学食を食べているとおもう。
息を切らして、私は賑わっている食堂の中を、探した。
すると、奥の席でトレイを持って、席を立った人がいた。
……間違いない、あれが江実だ。
「江実!!」
「桜? どうしたの?」
「江実、それ片付けてこっちきて!」
私は、江実がトレイを置くのをまつと、手を引っ張って人気のないところへ連れ出した。
つい最近まで恐れていた相手を、今こうして引っ張っている。
……私、なにやってんだろ。自分でもわかんなかった。
でも、江実に怒りを覚えたのは、確かだ。
「何?」
「……あのね、さっき健から聞いたよ。里子と江実が、こんな関係になった理由を……」
「!!」
江実の顔色が、一気に変わった。
眉間にしわを寄せ、とても決まりの悪そうな顔になった。
「……そ、そう」
「なんで? なんでそんなことしたの?」
「…………」
江実は、黙ったまま口を開こうとしなかった。
「私さ、江実いい人だっておもってたんだよ!? 将来の夢もちゃんとあって、優しくて……」
「ごめん」
私の話が終わる前に、江実はそういって頭を下げた。
「……え?」
「あたし、あんとき馬鹿だった。それでね、あたし、健君狙いだったの」
「え?」
江実の口から、ありえない言葉が飛び出したので、驚いた。
健狙い? どういうこと?
私が聞く前に、江実はその理由を喋ってくれた。
「里子のことは……あとで、きちんと話す。あたし、健君に近づく為に、桜と仲良くなったの……。
健君に近づければ、もう桜には用無しだって思ってた」
「……!」
「……でも今は違う。桜と、本当の意味で、友達になりたいとおもってる」
江実の瞳には、いつのまにか涙が浮んでいた。
私もつられてなんだか涙腺が、歪んできた。
「ごめんね……こんな理由で近づいて! 許してくれないとおもうけど……」
「いいよ」
「……え?」
江実は、私にすがり寄ってきた。そして、俯けていた顔をゆっくりあげる。
「ちゃんといってくれたなら、いいよ。でも……私は、里子に謝ってほしい」
江実は、ゆっくり頷いた。