コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: +Rainbow Light Music+ ( No.40 )
- 日時: 2011/08/23 22:53
- 名前: 苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: xe6C3PN0)
- 参照: 凸=地獄 フツーにだるいよね
第二章『夏色恋心 ——凛子編』
第十三話『雨の夜』
六月に入り、いよいよ梅雨というシーズンに入ってしまった。
私は虫よりも、おばけよりも、なによりも、この季節が世界で一番大嫌いだった。
だって化粧はよれるし、髪ぐちゃぐちゃだし、なんかモヤモヤするし、服はびしょ濡れだし……。
しかもこの状態が一ヶ月以上続くっていうんだから、本当たまったもんじゃない。
私は今日もイライラしながら、水玉模様の傘をさして、いつもの通学路を歩いていた。
桜は今日、親戚の法事があって お休み。里子はなんか、他校の子と約束があるらしく、とおの前に帰った。
純也は塾があるみたいだし、健はヤボ用がはいったみたいで、さっさと帰ってしまった。
ってことで私は、近くのコンビニで雑誌立ち読みして時間を潰したあげく、今こうして家路に向かっている。
日が暮れた後の雨っていうのは、なんとも不気味だった。
……ほら、なんか公園から変な音が……ん?
私は、ふと公園のほうに目を向けてみた。
かすかな街灯が照らし出す、一人の少年の姿。少年は、水溜りを蹴って、走っていた。
しかもそれを何回も何回も繰り返し、雨が降っているのにも関わらず、彼は走り続けた。
……なんだろう。
でもよくみると、彼の着ている体操着は、なんと虹ヶ丘のものだった。私は驚いて、声をあげた。
「えっ……嘘」
「……ん」
やばっ、こっちみた!! 私はとっさに、違うほうをみた。
すると少年は立ち止まったあと、ゆっくりとこっちに近づいてきた。
「……君、虹ヶ丘? このへんに住んでるの?」
「あ、はい……」
いつのまにか、私は彼と屋根のあるベンチに座っていた。
「……あの、虹ヶ丘の人ですか?」
「うん。俺は二年の二葉憲次。陸上部だ、よろしく」
「あっ……」
二葉憲次となのる、二年の先輩は、そっと手を差し出した。
日焼けしていて、大きい頼もしそうな先輩の手……。
私もいつのまにか、手を差し出し、握手していた。
「……私は、一年の百屋といいます。軽音楽部にはいってます」
「へぇー! そういえば一年生が軽音楽部作ったとか聞いたなぁ。君だったのか」
「……いえいえ。小学校の頃からベースをやっていて、昔からの仲間と、バンドやってるんです」
私ったら、初対面の人に何を語ってるんだろう。
少し恥ずかしくなったけど、先輩は真剣な眼差しで聞いてくれた。
「へぇーかっこいいね。……君、どこの中学なの?」
「春椿です」
すると、先輩の目が見開き「春椿!?」と叫んだ。
「俺の心友がそこ出身だよ。俺は、隣の西塚中出身だけどね」
「西塚ですか……」
駅の近くにあって、交通も便利な場所だ。
に比べたら、春中は何もないし、ちょっと不便なところにある。
「……あの、どうして、ここで走ってたんですか?」
「ああ。ここは地面がよくて、たまに使うんだ。昼間は子供がいるから、夜しか無理だけどね……。
もうすぐ、陸上部で試合がはじまるんだけど、それにむけて今、走りこみをしていたところなんだ」
自主練ってところか……。なんだか、尊敬するなぁ。
私は「すごいですね」といって、笑って見せた。
「ところで君、こんな時間まで大丈夫? もう七時半だよ」
「えっ!?」
慌てて私は鞄からケータイを取り出し、時間を確認した。
たしかに、先輩のいったじこくと同じ時間を差している。
「……だ、大丈夫です。すぐそこですし……先輩こそ、大丈夫なんですか?」
「俺はいいんだよ。どうせ八時に帰ってこようが十二時に帰ってこようが、どうでもいいんだよ」
「……そうですか……」
先輩のいった意味がよくわからなかったけど、私はとりあえずそれ以上何も言わないことにした。
「じゃ、そろそろ帰るか」
「はい……」
先輩は鞄を持つと、歩き始めた。私も隣に並んで歩く。
「どっち?」
「あ、右です」
「そっか。じゃあ、またね」
「はい……」
私は先輩の背中を、消えるまでずっと見続けていた。
……先輩の背中が消えたとたん、私は地面に目を移した。
……ん?
これって、先輩の生徒手帳?
「どうしよう……」
今更追いかけるのもなぁ……。
とりあえず、私は生徒手帳を手にとると、玄関をあがり家に帰ることにした。