コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 彼女は魔王で俺はなに!? ( No.2 )
日時: 2011/07/22 01:13
名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)

俺は父・・・紅凪戦事。いかにも暑っ苦しそうな名前を持っている父・・・というか、その名前みたいに暑っ苦しい父を適当にスルーしてから、妹の隣の席に腰をおろす。妹はもう、朝飯・・・食パンを食べていて、父親も同じように食パンを食べているが、俺の前にはなにも飯が用意されていない。・・・まぁそりゃそうだな、俺、いっつもこんな時間におきてこないし。母さんだってそんな無駄なことをするはずないからなぁ・・・。
俺は無言で腰をあげて、リビングにつながっているところにある台所で、下手な鼻歌を響かせているその人物のもとへ歩いていくことにした。
足音に気が付いたのか、その人物は鼻歌を止めて、こちらを振り向く。その顔はまさしく・・・俺の母親、紅凪秋帆のものだった。身長は俺の173cmよりもちょっと小さい167cmというちょっと女性としては大きいかなというぐらいで、スタイルはまぁちょっとぽっちゃりしたタイプで・・・最近、若干顔にしわがでてきて、おばさん化してきている、その人だった。
母は、こちらを見て、奇妙なものを見るような目で一瞬こちらを見た後、すぐに笑顔になって・・・

「あらあら黎ちゃん・・・今日ははやいのねぇ。ご飯、食べる?」

「いや、俺も由比たちとおんなじ食パンでいいよ」

「・・・ふむ、最近朝ごはんにみんな食パンを食べるからつまらないわぁ」

と、そういいながら食パンの入った袋を棚から取り出して、その中から食パンを一枚だけトースターの中にいれる。俺はできたらもってきてくれ、といって、リビングにもどって、再び由比の隣に席を下ろす。
・・・明るい食卓だ。にぎやかな食卓だ・・・というぐらいではないけれども、なんとも普通な食卓だな・・・と俺は思う。父親がいて、母親が料理をしていて、妹が隣で食事をしている・・・。こんな光景は、当たり前のようなもので、当たり前でないものなのだ。たとえばだ、貧しい暮らしの一なら親なんかは朝からいなくなってしまっていて、食事は子供だけで食べるとか・・・そんな光景、想像しただけでも俺は吐き気がしてしまうのだが・・・まぁ、いい。この光景は、とりあえず、俺の中にある幸せリストの中でもずいぶんと上位のほうにあるっていう話なだけだからな。・・・なに?幸せリストが乙女チックだって?・・・別にいいじゃねぇかよ!!そんなこと!!

「お兄ちゃん」

俺が頭の中で、ちょっとは乙女チックだったほうが男としてはいいんだよ!!とかなんか意味のわかんないことを講義している途中で、隣から由比が声をかけてくる。俺はそれに我に帰って

「な、なんだ?」

と聞き返す。すると、由比は若干真剣みを帯びたような声で・・・こう告げてきた。

「お兄ちゃんは・・・さ、もう一度だけでも・・・【魔法】を、使ってみる気、ない?」

「・・・」

その言葉は・・・俺が【魔法教育施設】をやめてから、何度も聞いたことがあった。異端者である俺は・・・由比に迷惑をかけないために、もう二度と魔法を使わないと決めたのだ。それには理由がある。俺が魔法を使うことによって、由比は・・・異端者の妹ととして・・・生きていかなくてはならなくなってしまうから・・・そんなことなら・・・俺だけが【異端者】という汚名をもって・・・生きたほうが、ましだ。
・・・でも、そんな説明をするのは・・・もう、やめた。俺は由比に、一度だけそう説明したことがあった。由比は、その言葉に・・・涙を流した。俺に才能がないのは自分のせいだって。自分が、俺の才能を喰っちまったんだって・・・自身を追い込んだことがあったのだ。
もちろん、俺はそんなことをこれっぽっちも思っていない。これは・・・ただ俺に才能がないだけで・・・由比に才能があっただけの問題だし、由比がなく必要なんてなかった。なのに・・・俺は由比に、誤解をさせて、なかせてしまった。
だからこそ・・・俺はそんな説明をする気はない。俺の幸せリストの中で上位にある今のこの光景を前にして・・・辛気臭い話をするのなんてごめんだな。
だから俺は、なるべく明るい笑顔をつくって。由比にこういってやることにした。

「魔法を使うぐらいなら運動をしたほうがましだからな!!」

「おぉっ!!黎よ!!ようやく父さんのやっていることの素晴らしさが・・・」

「黙れこのやろう」

「息子に黙れって言われた!?」

「ま、そういうことで俺は魔法を使う気はないな」

「う・・・うん、それならいいんだけど・・・」

「あー・・・もしかして、俺が魔法を使わなくちゃいけない事情とかあったりする?」

「そ・・・そんなことはないんだけど」

「そっか、じゃ、今日はお前と一緒に学校にいくよ」

「・・・ふぇ?」

「ハッハッハ!!由比の隠し事なんて一発でわかるってーの。どうせあれだろ?前みたいに俺のことでちょっとしたトラブルがあったんだろ?」

「う・・・うん、まぁそのとおりなんだけど・・・」

「だったら俺がお前と一緒にいってちょっと話あってそれで解決だ。よし・・・そうと決まれば今日は休みの連絡いれとかないとな・・・」

俺の働いている先・・・つまり、東区域【魔法教育施設】の近くにある、小さな喫茶店は、まぁそれなりに客は多いもののなかなか従業員が増えないことで有名の【キャッツファィアー】という、ちょっと変わった名前の店だ。俺が休むとかいった暁には、困るよぉとかのほほとした性格のオーナーがいうかもしれないけど、オーナーよりも、その店の経営なんかよりも、妹のことを大切に思っている俺は、そんなことは当然気にもならないわけなんだけどな。
・・・なに?シスコンだって?ハッハッハ、ないない、そんなことは絶対にありえないね。俺はただ、普通の、一般的な、お兄ちゃんなだけだ。

「あ・・・あの、お兄ちゃん!!」

「ん?どうした?」

俺は、母がもってきた食パンにバターをたっぷりと塗りたくりながら、妹に返事をする。妹の声にはなにかを決意したかのような色が宿っていたが・・・ふむ、なんだろうな?