コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 彼女は魔王で俺はなに!? ( No.5 )
日時: 2011/07/22 15:13
名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)

会話をおとなしく聞いていた俺に、突然、由比にえりなさんと呼ばれていた人物が振り向く。その瞬間に後ろで結ばれた漆黒の髪がなびき、俺はそれに一瞬俺は一瞬それに目を奪われるが・・・その瞬間、再び放たれた蹴りにすぐさま反応して、俺は今度は助走なしでスライディングをするというちょっとありえない行動をとって、由比のもとに戻る。由比はちょっと戸惑っているふうな感じなのだが・・・ふむ、どうやらこれが一度じゃないみたいだな。由比が男にいいよられるというものは。それはそれとして兄としてはなんともいえないものなのだが、どうやらこのえりなそんとかいう人物・・・由比が男に言い寄られるたびにこうやって現れて撃退しているらしい。・・・いい用心棒だな。これで俺が働いてためた金の全財産を使ってまでも実行しようとしていた由比との二人暮しはなくなるが、俺のサイフにもやさしいのでとりあえず俺は安堵のため息をつく。

「お兄ちゃん・・・だと?貴様・・・あたしでさえもまだ『お姉さま』とか『お姉ちゃん』とかいわれたことないのに・・・」

だけど、どうやらいらない怒りを買ってしまっているような・・・

「この怒り・・・どうやって貴様に叩き込んでやろうか・・・」

えりなさんというかたはどうやら臨戦態勢になってしまって・・・っておいおい、まずいまずい。あいつは仮にも【魔法教育施設】の人間で、魔法を心得いるはずだ。だから本当の戦いになっちまえば、俺は由比に連れられてきた理由を果たさずに病院送りになっちまえ可能性が高いんだな。
ま・・・そうならないためにも・・・えりなさんには悪いが・・・俺もちょっくら本気をださせていただこうか。
そう思いながら・・・俺も独自の臨戦態勢をとろうと構えなおす寸前で・・・

「えりなさん!!それにお兄ちゃんも仲良くぅっ!!」

という、由比のちょっと怒ったようで、泣き声が混ざったかのような・・・聞いていて切なくなってしまう、心が痛んでしまう叫びを聞い
て・・・俺たちは・・・

「やぁえりなさん、はじめまして、そしてキレイですね、結婚してください」

「オホホホ、お兄さんはお世辞がうまいんですねぇ、ですが結婚はいたしません、あたしはお兄さんの妹、ゆいにゃんさまと結婚するつもりですから」

「おっとえりなさん、なにをおっしゃっているのですか?この俺こそが由比に相応しいと思われるのですが・・・」

「あたしの聞き間違いでしょうか?お兄さんはあくまでもゆいにゃんさまの兄でございますよね?それならば結婚できるはずがないかと・・・」

「そんなことは関係ないのですよ。形ではなく、心があればいいのですよ」

「オホホホホ、かっこいいことをいっているように見えて、ずいぶんとシスコンなことですねぇ、お兄さん?」

「ハッハッハ、なにをいっているのやら、兄として、悪い虫がつかないようにするにはそういうのが一番でしょう?」

「あたしの聞き間違いでしょうか?悪い虫と聞こえたのですが・・・」

「ハッハッハ、えりなさんは確実に悪い虫ですよ、俺の中では」

・・・俺たちは、偽りの笑顔を貼り付けて、握手を交わす。その交わされた握手はどうしてかすごい握力がかけられていて、すさまじい痛みを伴うものだがしかし、そんなのは関係ない。・・・俺・・・こいつのこと、いきなり嫌いになりました。
一期一会、という言葉が存在する。たとえ一度しか会わない相手でも出会いは大切にしろとかいうようなものだったような気がするが・・・俺はこいつとの出会いを大切にしたくない、というよりも、今すぐこの世界から排除してやりたいね。
それでも、俺たちの妙な緊張感を伴った握手はとまらない。互いが互いの手を握りつぶすまでやめるつもりはないといったふうな感じで笑いあい、美しい友情を語り合っているんだといわんばかりの美しい声で汚い言葉を吐きまくる。

「あらあらお兄さん、言葉が達者なことで。それだからあたしに一発でシスコンだと見抜かれてしまうのですよ?」

「うっ・・・はっはっは、そういうえりなさんこそ、なかなかにお言葉がうまいですねぇ?だからすぐに俺に百合だって見抜かれてしまうんですよ?」

「このくそ・・・オホホホ、それはありがとうございます、あたしにとって最高のほめ言葉でございますわ」

「おっとっと、心の声がでていらっしゃいましたよ?」

「あらあらお兄さん、お兄さんの耳はどうやら幻聴しか聞こえていらっしゃらないようですねぇ?どうです?今から私がいい病院紹介しましょうか?」

「ご遠慮させていただきますよ。どちらかっていうとえりなさんのほうがその病院にいったほうがよろしいのではないでしょうか?」

「オホホホ・・・」

「ハッハッハ・・・」

「くたばれこの百合女あああぁぁぁ!!」「くたばれこの出来損ないのシスコンがああぁぁ!!」

俺たちは同時にそう叫び、すさまじい力でにぎっていた手を離し、距離をとる。そのまま俺は臨戦態勢をとり、えりなさんは・・・魔法の詠唱体制にはいる。おっとまずい・・・このままだとまじで病院いきになっちまう。・・・ならば———ちょっくら本気をだすしか・・・だがまたその瞬間に・・・横からはいってきた声によって———

「もうお兄ちゃんなんかきらい!!えりなさんも・・・きらいいいぃっ!!」

「ハッハッハ、えりなさん、今日からなにとぞ、よろしくお願いしますぞ?」

「オホホホ、こちらこそ、末永くお付き合いいたしましょう、お兄さん」

再び偽りの笑顔で握手を交わすのだった。
あれ・・・なにか目的を忘れちまっているような気もするんだけど・・・どうしてこんなことになったんだっけ?とか思いながら、俺たちは二人がかりで完全に泣き出してしまった由比をあやすのに四苦八苦するはめになってしまった。