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Re: 彼女は魔王で俺はなに!? ( No.6 )
日時: 2011/07/25 23:03
名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)

「あー・・・それじゃぁ、このお兄さん・・・黎さんが長井のくそったれがいってた・・・その・・・【異端者】なのね?」

由比をあやし終えた後、人がいない場所に移動した俺たちは・・・朝の、ホームルームを無視するとか言い出したえりなさん・・・藤崎えりなさんになぜ俺がここにいるのかということを質問され・・・由比がそれに答え、今この現状に至る。
聞けば、えりなさんはどうやら由比と同じクラスの友達らしい。成績も優秀で、前回の大会では八十五位という、由比と同じぐらいの実力の持ち主だということはいわずともわかった。その上・・・由比とは違う、女らしさをもっている。由比と同じ十四歳のくせに、外見は俺よりもも上に見えてしまうほど美しく、漆黒の髪の毛はそれをさらに際立たせていて・・・大人の魅力、というものをもっていた。あれだ、由比が妹ならえりなさんは姉、といったところだ。それなのに・・・残念なのは、やっぱり百合っ気があるっていうところなんだよなぁ。
もちろん、由比は渡すつもりはないけどな。

「ちょうど二年前に報道された・・・【異端者】が由比のお兄さんだったなんてねぇ・・・なんでも、魔法は使えるけど属性がひとつしか使えないんでしたっけ?」

「ん、まぁそのとおりなんだけど・・・最近だと魔法もろくに使ってないからもう魔法が使えるかどうかも怪しいんだけどな」

「・・・でもお兄さん、さっきの動きは『異常』でしたよ?」

「ん・・・?なにがだ?」

「完全に不意をついたと思ったあたしの蹴り・・・その後のまったくすきのない構え・・・魔法を使っているもの・・・もしくは、王宮で訓練されている兵士とかと同等のレベルの動きでしたよ?」

「あー・・・まぁそのあたりの詮索はしないでくれ。説明がめんどくさいし・・・由比にもまだ、言ってないことだからな」

最後のほうは小さな声で、えりなさんにそう告げる。
えりなさんは、ちょっと納得がいかないといったふうな顔になったあと、直ぐにデレっとしたふうな顔になって由比に振り返り・・・

「由比にゃ〜ん・・・長井の件はたぶんもう心配いらないよぉ〜」

「うぇ・・・?どうしてですか?」

・・・同い年だというのに由比はなぜかえりなさんに敬語を使っている。とはいうものの、俺もえりなさんのことはえりなさんとしか呼べないでいる。年上なのに・・・さん付けをしなきゃやっていけない理由はいわずともわかるとは思うが・・・まぁ美しすぎるえりなさんの外見のせいだからな。

「お兄さん、魔法を使わなくても十分・・・【異端者】だからだよ〜」

「・・・っ!!お兄ちゃんは【異端者】なんかじゃないもん!!なんも・・・普通の人と変わんないよ!!」

えりなさんのその言葉に、突然由比が激情する。・・・それはそうだ。今のはえりなさん、言葉が悪かったな。由比はどうも、俺が【異端者】と呼ばれるとわれを忘れるというか、なりふりかまわず怒ってしまうようになってしまったらしい。それは・・・俺が【異端者】と言われ、忌み嫌われたあの一ヶ月・・・俺自身、もう死んでもいいんじゃないかと思ってしまうぐらいの嫌がらせを受けていたあのころ・・・由比も同じように被害をうけていたという。でも、由比は自身の実力で俺の汚名をつぶし、自分は才能があると見せ付けて・・・なんとかなった。だけども、俺はそうはいかなかったのだ。最初、俺は【異端者】だからといって別段嫌われているわけではないとかそんなことをいっていたような気がするけど・・・それはあくまでいまこの現状においての話だから、とりあえずさきにいっておこう。俺は、自身の力でそれを乗り切ることができなかった。魔法の才能もなく、【異端者】としての汚名を捨てようとせず、そのまま家にひきこもってしまった俺は・・・由比に・・・一度だけ、生涯でたった一度だけ・・・由比と、本気で喧嘩をした。
由比はなにもかもから逃げ出した俺に、本気でぶつかってきた。涙を本気で流しながら、魔法を使って、俺のことを本気でつぶしにかかってきた。当然そのころの俺は、一応だけど魔法を使えたので・・・それで応戦をしたが、当然才能があった由比に傷ひとつ与えることなく・・・というよりも、今まで大切に育ててきた妹を傷つけることなんてできるはずもなかったから俺は・・・そのまま、由比の魔法を何度も何度も体にうけて・・・それでも俺は、倒れることなく・・・由比にこういったのだ。

(お前は・・・【異端者】の俺を、認めてくれるのか?)

と。
当然、由比の答えはイエスだった。その返事を聞いた後、俺がなぜ魔法を使うのをやめたのかとかいろいろ由比に話たりして、由比に迷惑をかけたりして・・・それでも、才能のある妹においつけるよう・・・俺は別のことで努力をした。
だいたいそんなこんながあって・・・由比は、俺が【異端者】と呼ばれることを嫌うようになったのだ。
魔法という点において欠点があるが、努力をする姿はどんな人間とも変わらない。人間には必ずひとつ欠点がある。ただ俺のひとつの欠点が魔法なだけだ・・・そう、由比は前に俺に話していた。俺が自分のことを【異端者】だと呼ぶたびに、そんなことを結いは必ずいうのだ。
だから・・・えりなさん、言葉にはちょっと注意したほうがいいぜ?うちの妹様は切れるとちょっと怖いからな。

「おっと・・・ごめんね、ゆいにゃん。今のはあたしが悪かったよ」

「お兄ちゃんは【異端者】じゃないもん・・・それなのに・・・」

「うん・・・そうだね、長井のくそやろうはなんもわかってねぇんだよな。実際問題・・・しゃべってみても、黎さんはいい人だし、【異端者】とかいうだけで、忌み嫌う必要性をなんも感じないしね」