コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- ♪3 俺と馬鹿と夏休み。 後編 ( No.96 )
- 日時: 2011/08/01 16:50
- 名前: とろわ (ID: 1ZQMbD0m)
前回の番外編の続きです。
前回よりはシリアス…なのかなあ…?
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喫茶店から出ると、時間は三時ぐらいだった。
時間をつぶすにも、つぶすような所が無い。
帰ったとしても、特にやる事は無い。
なんて思ってると、突然拓也がつかつかと歩き始めた。
「………?」
とりあえず、暇だったのでついていく事にした。
「ここって———」
懐かしいな、ここ。
「そ。…なんとなくさ、お前といると来たくなるんだよな」
『うみどり公園』という、古臭い文字を見ると、フッと自然に笑ってしまった。
うみどり公園は、俺とこいつ——拓也と初めて会った場所、だったと思う。
まあ、あの時の事は色々と恥ずかしいから割愛。
…でも、小中学校の時はよく通ってたなあ。
ちなみに、うみどりなんて名前だけど、海の近くという訳ではない。謎のネーミングセンスである。
「あの時の事、覚えてるか?」
拓也が突然口を開けた。
とりあえず、面倒くさかったけど、答える事にした。
「なんとなく、だけどな。アホ面を晒していたお前の事」
「ばっちり覚えてるんじゃねえかよ」
なんて言うと、拓也はブランコに座った。
俺も隣のブランコに腰かけた。
「なんか、寂しいな。こんなに人がいないと」
拓也はどこか、遠いところを見ていた。
「確かにな。昔は結構いたもんな、ブランコ争奪戦とかやってたし」
「あー、そんな事もやったなあ。…懐かしいな」
「ああ、なんか、すげー昔のような気がする」
そう俺が言うと、拓也はボソリとつぶやいた。
「そういえば、さ。もうすぐここ、取り壊すらしいよ」
「そう、なのか」
まあ、そうするべきなんだろうな。
此処の近所に大きな公園ができてから、皆そっちの方に人が行ってしまった。
一回、中一の時にこいつと行った事があるけど、なんか寂しい場所だったなあ、確か。
人がいるのに、あたたかみを感じない———なんて、思いかえすと馬鹿らしい話なんだけどな。
「やっぱり、寂しいよな、そういうの」
ぎーこ、ぎーこ、ぎーこ。
しばらく、ブランコをこいでいた。
俺達は無言で、ブランコをこいでいた。
——そう、無言で。
俺は色々と思い返した。
なんか、忘れていた記憶がぶわっと戻ってきた感じがした。
拓也と初めて会った時の事。泥だらけになるまで遊んで、姉貴に呆れられた事。拓也と大喧嘩して、取っ組み合いになって、お互い顔面がボコボコになるまで殴りあって、お互いの顔に大爆笑して仲直りした事。
「…全部、終わりなのか」
俺は無意識に呟いた。
それに合わせるように、拓也はコクリと頷いた。
「そ、全部壊れちまうんだよ。思い出の場所は」
なんか、色んな感情がごちゃまぜになって、拓也の顔は直視できなかったけど、でも、なんか悲しそうな顔だった。
「でも、思い出がそれで途切れた訳じゃねえんだしさ。…確かに、壊れちまうのは悲しいけどな。でも、あの時に一緒に馬鹿やった事は変わんねえんだし、いいんじゃねえの」
俺は言う。
もしかしたら、俺の今の顔はすっげー不細工かもしれない。
でも、なんかすげースッキリしたから、それでいいか。
「ん、そだな」
拓也はクスリと笑ったような気がした。
「うっし、帰るかー」
拓也はそういうと、ブランコから飛び降りて、にやりと笑った。
「おう。…んじゃあな」
「って、何で先行こうとするんだよ輝樹ぃ!!一緒にかえろーぜー」
「ったく、面倒くせえ奴だな、お前」
昔とは色々変わったかもしれないけど。
それでも、俺達の仲は変わらない…のかもしれない。
あー、夕日綺麗だなー。