コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *田中さん家の日常*『10話更新』 ( No.44 )
- 日時: 2011/09/17 15:47
- 名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: lIcPUiXw)
じゅういち 「天下無敵のあず姉……なのかな?」
朝、私はみんなのお弁当を作り、朝練がある翔君を送り出した後、部屋に戻って出かける準備をします。今日は友達の家にお泊まりなので、少し大きいバッグに必要なものを詰めます。下着、部屋着、洋服を入れるだけなので、トートバッグよりワンサイズ大きいバッグなので、おそらく邪魔にはならないでしょう。そのほか、レポートを書くのに必要なものを別のバッグに詰めると、もう一度リビングに降ります。
「あれ、そんな荷物を持って何処に行くんだ?」
「彰人、昨日言ってただろう。友人宅に泊まりがけでレポートを仕上げるそうだ」
「あ、そうだっけ」
二人の兄が食パンを食べながら話しています。彰兄には昨日言ったはずですが……おそらく、お酒をたしなんでいる時に言ったからでしょう。全く覚えていないようです。そのぶん、しっかり者芳兄はちゃんと覚えていてくれました。一家の大黒柱です。けれど、そんな芳兄も友人が気になるようで……。
「梓、しつこいようだけれど、その友人とは同性なんだよな」
友達のことを聞いてきます。昨日の夜何度も同性だと言ったのに、まだ疑っているようです。
「はい。それに、私は異性にそれほど仲が良い方はいませんし」
「それなら良いんだが……」
「そうそう。梓にはまだ男なんて早いって!」
私はもう21なんですけど……なんて、私の事を心配してくれているこの二人には言えず、私はただ愛想笑いを浮かべます。大学にもそれはそれは異性はたくさんいますし、同じ学科が出会いとなってお付き合いをしている男女は、多数です。私のような恋愛未経験なんていう女子は、おそらく少数派でしょう。
「大丈夫ですよ。私は芳兄と彰兄がお嫁さんをもらうまで、異性とお付き合いする気はありませんし」
「……それはそれとして、妹がなかなか結婚しないのも兄としてどうかとおもうが」
「そうだよなぁ。可愛い妹が嫁ぐというのも寂しいけど、それが俺たちの所為だと思うともっと寂しい」
「ああ、なんだかすまない気持ちになるな」
確かに、芳兄は28歳で彰兄は25歳。芳兄はそろそろ身を固めても良い年齢ですし、彰兄も恋人の1人や2人いてもおかしくない年齢です。けれど芳兄は仕事一筋、彰兄は現在夢に向かってまっしぐらというので、お嫁さん云々の話はまだ遠い未来でしょうか。
「ま、ともかく、だ。あまり遅くまでレポートをやっているんじゃないぞ。先方にも迷惑をかける」
「はい、もちろん分かってます」
私は朝からこんな話をさせた兄二人のお弁当に、タコさんウィンナーの数を増やすと、孝君を起こしに行きます。———と思ったのですが。
「おはよ、あず姉」
「あら、孝君」
私が起こしに行く前に、自分から起きてきました。そのことに兄二人も驚いたのか、目を丸くしています。
「珍しいな、いつもは梓が起こしに行くまで部屋で勉強や読書してるお前が」
「うるさい、別に良いだろ」
「って、あず姉にはあいさつして俺たちには無しかよ……」
「はいはい。おはようございます、お兄さん達」
「「ひとくくりにするな!!」」
一気に騒がしくなったリビング。それでも、とりあえず孝君を椅子に座らせ、食パンをトースターに入れます。
「それにしても孝君、今日は早いですね」
「うん。だって、あず姉今日お泊まりでしょ?今のうちにお話ししておかないと、会えるのは明日だし……」
あぁ、なんて可愛いのでしょう。こんな弟を持って、私は本当に幸せ者です。兄のうち一人は堅物で、一人は料理バカ。弟のうち一人は思春期まっただ中の恥ずかしがり屋さん。そんな私に懐いてくれるのは、この孝君だけです。
「梓は本当に孝に甘いな」
「だよなー」
兄二人の言葉を黙殺したのは、言うまでもありません。