コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *田中さん家の日常*『2話更新』 ( No.6 )
- 日時: 2011/07/28 19:52
- 名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: 9K3DoDcc)
さん 「あず姉の朝3」
「梓、俺のYシャツはクリーニング出してくれたか?」
「はい、出しました。今日の夕方取りに行くので、ハンガーに掛かっているのを着てください」
「なぁ梓、今度俺のバイト先で新作出るんだけどな、実はそれ、俺が考えたんだぜ!」
「そうですか。ですが『考えた』のですよね。『作って』はいないのですよね」
「梓相変わらず厳しいなぁ」
「おい梓、なんだか今日のお弁当はずいぶんとおかずが減っているな」
「何か文句があるのなら彰兄のお店にでも行ってください」
「うん、いつも美味しいお弁当有り難う」
「俺のお店にそんなに来たくないのかよ!!」
先ほどまではとても静かだったリビングが、一気に騒がしくなった7時頃。
兄二人が出勤の準備をしているのを手伝う光景を、一人で孝君は朝食を取っています。正直言ってこの状況が、一日で一番無駄な時間だと思います。兄二人(主に彰兄)の相手をするぐらいなら、孝君が学校に行ってしまう時間まで孝君とお話ししていた方が、ずいぶん有意義です。
「ほら、早く行かないと遅刻してしまいますよ。彰兄はともかく、芳兄は忙しいのでしょう?」
「ああ、そうだな。彰人はともかく、俺は今忙しいからな」
「さも俺が暇のような言い方するなよ!」
「「え、違うの?(違うんですか?)」」
「すでにそういう認識!?」
「うるさいよ、バカ兄達。あず姉はあんたらほど暇じゃないんだよ」
「「お前は本当に可愛くないなぁ!!」」
「そんなことありません!孝君はとっても可愛いですよ」
「「それはお前といるときだけだ!!」」
孝君は本当に可愛いんですよ。私が一人で家事をしているときには手伝ってくれたり、兄と一緒に居れば間に入ってきて、可愛く頬を膨らましたり。
孝君は私にとっての心の安らぎです。
「ほら、早く行かないと本当に遅刻ですよ」
「確かにな。それじゃ、行ってくる。帰りはおそらく9時過ぎになってしまう」
「分かりました。彰兄は?」
「俺は夕方には帰ってくるよ」
「分かりました。二人とも、行ってらっしゃい」
「「行ってきます!」」
息のあった二人の挨拶に、私は微笑ましい気持ちになります。なんだかんだ言って一番家族のことを考えている芳兄と、料理家という夢に向かいつつも、家計に少しでも協力してくれる彰兄のことです。ああやって口げんかをしていても、おそらく帰ってくる頃には二人してお酒を飲み合っていることでしょう。
さて、ようやく二人が行ってくれたので、孝君とたくさんお話が出来ます。そう思って孝君の方を見ると……。
「孝君?どうしたのですか?」
「…………」
何故でしょう。何故か孝君は頬を膨らましています。本来大人っぽい顔立ちの孝君がやると、無性に愛らしくなってしまいます。私はすぐに抱きしめそうになりましたが、その衝動を抑えると聞きました。
「孝君、何か不満なことでもありましたか?」
「————みたいだった」
「へ?もう一度大きな声で言ってください。姉さん、聞き取れませんでした」
「兄さん達と夫婦みたいな会話だった!!」
「そ、そうですか?姉さんは全然そんなつもりでは……」
そう言うと、ますます頬を膨らませます。こんな事を思うのは孝君に失礼ですが、正直とておも可愛いです。普段の孝君と今の頬を膨らませている孝君は、ギャップが激しいです。
末っ子の力というのは本当にすごいですね。私は我慢ならずに孝君に抱きついてしまいました。
「あ、あず姉……?」
「はぁ。孝君は本当に可愛いですね。もうお持ち帰りしたいです」
「ここ家だけどね。でも、あず姉も可愛いよ」
「孝君だけが私の心のやすらぎです」
しばらくこうしていたいです。もう幸せです。今日は大学を休んで一人この余韻に酔いしれていたいです。すると、いきなり玄関のドアが開いて———
「忘れ物して……って、なにしてんだお前ら!!」
「「ちっ。なんで来るんだよ」」
「酷い!?芳兄に言いつけるぞ」
めっちゃいい所で彰兄が帰ってきました。私は思いました。彰兄のお弁当、白飯と500円だけ入れておいて良かったと。