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Re: *田中さん家の日常*『12話更新』 ( No.63 )
日時: 2011/10/10 20:55
名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: WtPXn5LU)

じゅうさん  「愛と友情はお金では買えない」

「…………はぁ」

登校すると、僕は一番後の窓際の席に座ると、大きな大きな溜息をついた。
あず姉とは今日一日会えないということを考えると、すごく退屈だ。あぁ、憎い。姉さんをとった友達が憎い。姉さんの料理が食べたい。

「どうしたの、孝君。なんだか元気がないね」
「……空」
「何かあったの?だったら、僕に相談してよ」
「断る」

心配してくれた友達に言う台詞じゃないけど、僕は間髪入れずツッコム。
僕の友達、上崎空(かみさき そら) は特にそれを気にした様子もなく、平然としている。

「遠慮しなくても良いんだよ?」
「遠慮以前の問題だよ。お前に相談したら絶対ろくな事がないだろ」
「そうかなぁ?」

こう言う場合、たいてい本人は無自覚だから困る。
僕は懇切丁寧に本人に教えてやった。

「あのね、空。僕が相談したら、どんな方法で解決してくれるつもりだったの?」
「そりゃもちろん、お金で」
「だから断ったんだよ」
「ん?どういうこと?」
「だから、空の場合。僕は相談したら何でもお金で解決しようとするだろ?」
「それの何処が行けないんだ?」
「あのなぁ……」

この会話を聞いた大半の奴らは、空が生意気でお金にしがみついているガキだと思うだろう。
けれど、空本人からしてみればそれは当たり前のことであり、仕方のないこと。空の家はお金持ちで、小さい頃からお金には全く困らない生活をしてきた。そんな生活をしてきたからこそ、そのようなブルジョワ発言を特別とか変とか思わないのだ。

「何でもお金で解決しようとするな。常識だろ」
「僕の常識と、孝君の常識は別だろ?」
「確かにそうだけど、そういうことを堂々と言うな」
「はぁい。で?なんか悩み事?」
「別に、そういうわけじゃ……」

空に話してもどうせ分からないだろうな。というか、空にはあず姉のことを話してはあるけれど、会ったことはない。
だからここで「姉が友人宅に泊まりに行ってつまらない」なんて言ったら、それこそどん引きされる。空のブルジョワ発言よりもどん引きされる。

「何でもないって。そういえば、今月テストだな」
「ノート貸してあげようか?」
「いや、大丈夫。というか、絶対お前には負けたくないんだけど」
「何それ」

いつもの空とのやりとりで、なんとかあず姉がいない寂しさから気を紛らわす。
ま、空と一緒に居るのも楽しいから、まぁいっか。なんて思った自分が、居たり居なかったりした。