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Re: *田中さん家の日常*『4話更新』 ( No.9 )
日時: 2011/07/29 17:22
名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: 0.DI8Vns)

ご  「あず姉に惹かれる奴らの気が知れる……」

「よう翔汰。今日も朝早いな」
「は、はい先輩!」

俺が学校に着くと、すでに部長が練習していた。この部長は俺の尊敬する先輩でもある。勉強は出来るしスポーツ万能だし。噂によると、プロのチームからスカウトされているらしい。それほどサッカーが上手な先輩だ。
 しかし、そんな先輩でも欠点がある。それは———

「あ、あのさ翔汰」
「はい、何ですか」
「あ、あ、梓さんは……元気か?」

あず姉のことが好きということ。正直言って、このときだけ先輩が非常にガキに見える。俺も十分ガキだけど。しかも先輩は妙に顔を赤くしながら言うもんだから、失礼だけど少し笑えてしまう。
 あず姉ははっきり言って、モテる。それはあのお人好しの性格故なのか、はやまた容姿か。あず姉はサッカーの試合とかにもたびたび来てくれて、その都度差し入れを用意してくれる。もともと部員から好評価だったのに、その上差し入れなど持ってきたら好感度うなぎ登りだ。正直言って迷惑きわまりないし、あず姉に惹かれる奴らの気が知れる……。

「はい、元気ですよ」
「そ、そうか。それにしても梓さんも大変だろ。毎日朝練があるお前のために、早くから弁当作ったりして」
「まぁ本人は楽しそうですからね」

この会話を聞いたら孝太はなんて言うだろうか。小さい頃からあず姉にべったりで、その上重度のシスコンの孝太がここにいたら……。俺はそれを想像する。

『翔兄が尊敬する先輩って言うから、よっぽどバカなんだろうね』
『あず姉を好きになるなんて、百年早いよ』
『あず姉に寄るな、あず姉を見るな、あず姉のことを考えるな。あず姉が穢れる』

…………な、なんだか本当に良いそうで怖かった。

「どうした、翔汰」
「いえ、何でもありません。それじゃ、俺はぼちぼち練習始めるんで」

先輩があず姉のことをもっと聞いてきそうに違いない。経験上そんなこともしばしばなので、俺は逃げるように先輩のそばを離れた。
……本当に、あず姉のことさえなければ完璧なんだけどなぁ、先輩って。