コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ダウト 【参照300……だと……!?】 ( No.20 )
- 日時: 2011/09/24 12:15
- 名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: AidydSdZ)
- 参照: ハラ減った。砂糖くれ砂糖、糖分!
【 】
悪者っつーハズレくじを引いた奴は悪者を演じなきゃいけない訳で、たとえ悪意が無くとも問答無用で悪者扱いされる、普通だ。
悪者と勇者が仲良くなる、異常だ。
やっぱ、運命ってやつなのか。
白く濁った視界が映し出すのは、コケの生えた石が無造作に積み重ねられた今にも崩れそうな石の壁で、その光景とは全くの初めましてであった。なのに、何処か懐かしいような雰囲気を感じる。頭のどこかがかすかに覚えている光景。デジャヴってやつか、と、思いながら取り合えず胴体を起こしてみた。
辺りが暗いことと、驚くほど紅い炎が少し離れたところでメラメラと燃えていることが分かった。分からない事は、此処が何処なのかということと自分は誰なのか、ということだった。典型的な記憶喪失だ。溜息を一つついて、取り合えず火のある所まで行こうと立ち上がり、ゆっくりと歩き出した。
炎の元まで近づいていくと、数人の男達の笑い声や話し声が聞こえてきた。仲間だろうか、敵だろうか。彼等に近づいていくと、足音に気が付いた一人の若者がこちらを見た。
固まった。
「おい、どうし…………」
皆、こちらをみて固まった。本気で石にでもなったかのように、誰一人として動かない。瞬きさえ、しない。
と思ったら、一人がぽかんと開けた口を大きく開き、ぱくぱくと開いたり閉じたりを繰り返した。それに続き、隣の男が奇声を上げた。断末魔の悲鳴と名付けようか。悲鳴を上げた男はあぐらの状態から蜘蛛歩きをして後ろにのそのそと下がると、四つんばいになって口をあけたまま逃げ出した。凶器を向けられた銀行強盗の人質みたいな逃げ方だった。
「おい待てコラ」
俺は一番逃げるのが遅かった若者の茶色いスカーフみたいな変な奴を掴んでぐいっと手前に引き寄せた。布地は驚くほど硬く、ダンボールみたいな手触りだった。それと同時に、若者が驚くほど軽い。いや、若者が軽いのではなく、俺の力が強いのだ。
四つんばい状態から後ろにひっぱられた若者は上半身が浮いて、ひざから下だけで立っている状態になった。若者は恐怖に顔を引きつらせながら手をばたばたとして必死に逃げようとしている。
「此処、何処だ?」
可哀想に感じたので簡潔に聞くと、若者は歯をガチガチとさせながらも口を開いた。
「こ、此処は、魔界の、に、西の方にある、森の中ですうううう! 此処からいくと、み、南に街がありますううう!」
俺はそんなに怯えるほど怖い顔をしているのか。
礼は言わず、掴んだスカーフみたいな奴を放してやると、若者はやはり四つんばいで逃げ出した。普通に走ったほうが速いと思う。俺はゆっくりと森の中に抜けていく若者を見送った。
街にでも行って見るか。…………あいつ、俺に街の場所教えて大丈夫だったのか? 震え、怯えるほど怖い顔の男が街にきたらパニックだろうに。
俺は、終末へと歩き出した。