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Re: 【短編集】゜*。...恋愛事情...。*゜ ( No.4 )
日時: 2011/07/30 10:44
名前: 紫雨 ◆mXR.nLqpUY (ID: 8hgpVngW)






学校で一番好きなのは屋上だ。
煩いクラスメートもいないし、ぽかぽかしてて気持ちいいし。
安心して本が読めるし。

そう思っていたのに。

まさか、一番嫌いな場所になるとは思いもしなかった。
それはわたしが、屋上のベンチで寝転がりながら本を読んでいた時の事。

「さーさくーらさーん、何してるの??」

同じクラスのわたしより背の低いチビ莫迦野郎、行本 重。
授業中も、態々クラスメート達を使ってわたしに回し手紙を寄越すし。
というか声高いし、きっと女子のわたしより性格も可愛いんだろう。 あ、なんか凄いムカついてきた。

「見て分かんない?? 本、読んでるの」

嗚呼、わたしも相当な莫迦だ。
こんな戯言、無視して本に没頭してればよかったのに。
でも、無視したらしたでそれなりにしつこいから、一応受け答えはしておく。
そして流す。 これが一番いい方法。

「どんな本?? 難しい?? やっぱ篠鞍さんは文字ばっかりの本を読むんだよねぇ、僕にも読めそう??」
「知らない、つか寄るな」

一つ質問するたびに犬みたいに寄ってくる彼を見て、シッシッと手を振る。 目線は一度も合わせない。
反応をしないわたしを相手にして楽しいのか、という疑問はこの際もうどうでもいい。
取り敢えずこの莫迦をわたしから離す方法を試行錯誤して考える。 うん、無理。

「そんな事言わないでよ、寂しいじゃん!!」
「わたしは寂しくない」
「ぼーくーはーさーみーしーいーっ」
「黙れチビ」

もう駄目だ、わたしの理性が持たない。 後数回このやりとりを繰り返したら確実にわたしキレる。
兎に角屋上で本を読むのはもうやめよう、絶対コイツまた来るし。

そう思ってベンチから離れ、校舎内に続く扉へ。
行本は「待ってよ」なんて言って走って追いかけてくる。 マジでお前犬か。

「そんなに本読んでて楽しい?? ほら、みんなとテニスやろ、楽しいよ!!」
「……、運動嫌いだからイヤ。 ついでにあんたも嫌いだからイヤ」

階段を下っていく途中、先程まで響いていた足音も止んでいた。
後ろに気配もない。 ようやく諦めたか、とため息を吐く。

……。
少し気になって後ろを見る。
すると、

「あ、やっとこっち見てくれたね。 祐真ちゃん」
「……………………気持ち悪い」

にこりと柔らかく笑う彼を見て、苛立ったのは言うまでもない。






“振り返って”、君の優しい瞳を見た。

(ねーねー、もっかい見てー)(見てない)(意地張らないでもいいよ)(張ってない)(ほらほらこっち向いて)(しつこいっ)