コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【短編集】゜*。...恋愛事情...。*゜ ( No.7 )
- 日時: 2011/08/01 19:09
- 名前: 紫雨 ◆mXR.nLqpUY (ID: 8hgpVngW)
「あ、あーっ!!」
薄暗い通学路の道に、少女の声が響く。
隣で、自分と彼女が濡れないように器用に傘を差していた青年が驚いて目を見開く。
「終わりました、わたしの人生」
「いやいやいやいや、終わってないし」
長い髪をわたしの前で垂らし、微笑を浮かべる彼。
来賀谷 有栖くん。 わたしが大好きな人だ。
「だって、課題、出し忘れちゃったんですよ??」
「ボクなんて課題あった事も忘れてたけど」
そんな事で、と笑う彼を見るとホッとはするのだけれど。
やはり、どんなに空気が和やかでもわたしが課題を忘れた事実は変わらない。
嗚呼どうしましょう。 やはり、提出しに帰った方がいいだろうか。
「戻ろうかなぁ……。 ああもう、わたしのばか!!」
「篠田は怒るとウザいし、やめた方がいいと思うけど」
「ですよね。 篠田先生のお説教、一時間ほど続きそうで怖いです」
ああ、彼ならやりかねない。 そう思うとさらに不安がきて。
「でも、でもっ!! 行かなかったらもっと怒られますよねっ」
隣で葛藤を繰り広げるわたしを見て、有栖はくすくすと笑いを堪えている。
そういえば。 彼はさっき提出は愚か、ある事さえ忘れていると言っていた。 大丈夫なのだろうか。
「有栖くん、大丈夫なんですか??」
「ボクは別にー?? 今持ってないし、取りに帰るのめんどい★」
こういう状況時。 彼のような性格が本当にうらやましいと思う。
でも、わたしはそんなに臨機応変に態度を変える事は不可能に限りなく近いので、真面目に行動してしまう。
「や、やっぱりわたしっ、提出してきます!!」
そう言って、わたしは有栖くんが差してくれていた傘から抜け出し、駆ける。
一瞬一秒でも早く、学校について課題を差し出さなければ。
「有栖くんはっ、先、帰っててください!!」
「ちゃんと前見ないと——」
「へぶっ」
何とも予想通りの結果であろうか。
前を見て進まなかったので、水たまりで足を滑らしあろうことか顔面から転んでしまった。
おかげで、顔も体もぐちゃぐちゃに汚れていて、膝には擦り傷が出来ていた。
「いったー……」
「あ、触らないで、ばい菌入るから。 それと、傘、持ってて」
急いで私に傘を渡す有栖くん。
そのまま、わたしを横抱きにし、学校とは真逆の方向に走っていく。
わたしが雨に当たらないように、自分の方に寄せながら。
左側に顔を置いているので、前髪で隠れていて彼の表情はうかがえない。
「あ、課題……っ」
「課題より静寝の体が大事でしょ?? とりあえずボクのお家に強制連行★ ちゃんと課題にもいい策を用意してるよ」
そう言って彼はスピードを上げた。
通り抜けていく風がとても心地よくて、課題の事なんてもう一つも残ってない。
“隠れた”彼の左目が見えなくて、少しもどかしかった。
(実は、静寝の課題ボクが汚しちゃって)(は、)(だから、今提出★)(おい花宮、来賀谷ァ!!)(どこがいい策ですかぁ!!)