コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【オリジナル短編】赤い糸を結び直して ( No.9 )
- 日時: 2011/08/09 11:18
- 名前: peach ◆3Z7vqi3PBI (ID: fKZGY6mA)
- 参照: 最初で最後の僕の恋(恋した記憶はこれで十分です)
「タイムリミットはあと少し!」 1/4
「肩の骨、折れてますね」
そう私が病院で診断されたのはつい昨日のことだ。
第一の原因は、自転車で派手に転んだ時打ったということ。二つ目はそれから一週間くらい放っておいたことにある気がする。
まあそういうわけで、所属しているバドミントンの試合に、私は出られない。
普通に考えて、怪我をした部員は休日の練習になんて駆り出されない。
スポーツドリンクづくりも、試合の日程を書いたプリントを作るようなマネっぽい仕事もしない。
だから私は、もう、この暑い体育館でつらい練習をしなくて済むなんて嬉しく思って学校に来たのだけれど。
「あ、じゃあこれからはマネージャーってことで練習に来てくれるかしら?」
「え、で、でもいつもならこんなことしない…ですよね、普通に考えて」
「あら、情熱的に考えなさい? チームメイトがこんなに暑い中で練習しているのにあなたはクーラーのきいた家でアイスでも食べて涼んでるつもり? そんなことを2年がして、1年が真似しないかしら?」
「……わか、りました」
そんな感じで私は今日も明日も来週の今日も学校に来てマネージャーっぽい仕事をしなくちゃならない。
部員全員の水筒を抱えて、入口の冷水機に向かう。
重いし暑い。しかも肩が痛くて片手しか使えないから何回も往復しなくちゃならない。
その前にっと。
ポケットからくちゃくちゃになったハンカチを取り出し、それを冷水機の水につける。
普通の水道水だと、この熱い空気で熱せられていて生温かいから。鋭い冷たさの水を使いたい。
でも、この水は飲料水だから見つかったら怒られる。ていうか目の前に≪顔を洗ったり布につけたりして飲む以外に使うのはやめましょう≫って張り紙がしてあるし。
それに夢中になっていて、外から来る人に気付かなかった。
乱暴にドアが開く音がした。
「邪魔なんだけど。
どいてくんない?」
「あ、ごめん」
普通に謝って、場所を譲る。
顔をあげてみてみると、その人物は同じクラスで野球部の瀬戸だった。
良く考えたら、ハンカチに水をつけてたこと見られてたけど、それについては何も言われなかった。
「肩、骨折でもしてんの?
ギプスはめてあるけど」
水を飲み終わったのか顔をあげて、スイッチを押していた足をどける。
「ああ、まあね。
ちょっと自転車で転んじゃって」
「だっさ!」
言葉にしては教室でみることのできない可愛い笑顔で言われて、こっちも怒る気持ちになれない。
少し胸がキュンとする。
そういえば、野球部なのに加瀬のユニフォームは何も汚れていなくて、少し不思議に思った。
「瀬戸、野球してないの?
瀬戸もどこか痛いとか?」
聞いてみると、瀬戸はいきなり怒った表情になって、
「関係ないだろ!」
乱暴に言い残し、外に出て行った。
ポカンとしている私の耳に、休憩のアラームが聞こえてきて焦るしかなかった。