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Re: 【オリジナル短編】赤い糸を結び直して ( No.16 )
日時: 2011/08/16 15:44
名前: peach ◆3Z7vqi3PBI (ID: fKZGY6mA)
参照: 何も言わなくていいから

「love×3」1/3


by森口美樹

今日は生徒会の日だった。
いつも決まった日にやる委員会と違って、いきなり先生に呼びつけられてしまった。別に嫌でやってるわけじゃないから別に良いけれど、読みたい本があったから少し残念。
日常的に歩いているこの坂を今日もまた歩いて、家へ帰る。
色あせた店の文字。掠れた道路の止マレの文字。薄く光る電灯。
小さいころは何もかもが新鮮に見えたのに、今ではそんなのは少しも感じることがなくなってしまった。
変化が、私の周りで少なくなりつつある。中学にも慣れてしまったし、友達関係も、恋愛関係も、何もかも。
道路を渡り三歩歩くと、後ろに誰かがいる気配がした。
「森口?」
振り向くと、萩原が居た。
           
いつも男子のことを君づけで呼んでいるのは、印象を良くするため。
何かからかわれても、意地悪されても、あいまいに微笑むのも印象を良くするため。
でも、そう作為的にやっていることが萩澤にばれてしまった。今までは全然話すこともなかったのに、今だとそのことばかり、顔を合わせるごとに言ってくる。
「学校の帰りだろ? 今日何か宿題あったじゃん、早く帰ってそれを済ませるとかそういうことは、やっぱり良い子じゃなかった森口はやらないんだろうな」
「うるさいよ…」
いつもだったら何も言わずに顔を赤らめて首を左右に振るだけだけれど、いつもの相手じゃないのでそれをやる必要はない。
それに、やったってきっと萩原には好きな人がいるようなそぶりがあるし、意味がないだろうから。
「人にそんなこと言ってないで、自分も早く帰って宿題やったら? いつも忘れてるでしょ、萩原君」
「俺はもう授業中に終わらせたし。 ていうかまだ俺にも君、つけるんだ」
「癖になっちゃってるから。 とったほうがいいならとるけど?」
そういうと、なぜか萩原は少し顔を赤くして下を向き、「いいよ別に」と小さく言った。
「…じゃあ俺は帰るから。 夕飯食ってねえし」
言って、そのまま家の方に歩きだす。
あいさつも何もないのかと思ったけれど、そのまま私も足を踏み出そうとすると。
急に後ろを振り返って、萩原手を振る。小さい声だけれど、じゃあな、と聞こえた気がした。

私も、ちっちゃくだけれど手を振り返した。

分からないけれど、心の隙間が少しキュンとした。



by下神杏那


美樹ちゃんと、萩原が、一緒に居た。
制服姿で、バッグを持って。
なんで?なんで?なんで?
萩原のことは、胡桃が一番好きなハズなのに。



いつもびくびくして、人の機嫌を伺っていた自分。
怖がりで、嫌われてしまう自分。
そんな自分が嫌だった。
教室では、何も気にせずに自分の意見をちゃんと言う、萩原が居た。

なんで好きなのか、そんな明確な理由なんてないけれど、やっぱり胡桃は萩原が好きなんだなって、やっと自覚してきた頃。

今思いつく言葉なんて、

「なんで?」しかないよ?


きっと二人は付き合ってる。
美樹ちゃんは成績もいいし、可愛いし、やっぱり恋人にしたいだろう。男子は。
性格も、良いと思う。
美樹ちゃんだから、≪怒り≫って気持ちよりも≪悔しい≫って気持ちよりも感じたのは先の見えない絶望、だった。