コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 【オリジナル短編】赤い糸を結び直して ( No.17 )
日時: 2011/08/16 15:41
名前: peach ◆3Z7vqi3PBI (ID: fKZGY6mA)
参照: 観覧車から見える景色は、すごく綺麗なはずなのに

「love×3」2/4

朝、布団の中で目を覚ますと、不覚にも萩原の顔が瞼の裏によみがえった。

(昨日のことが尾ひれを引いてる)

いつもとは違う萩原の顔、声。学校に居る萩原なら、絶対に挨拶なんてしないし手も振らない。
それが私にいつもとは違う特異として脳に記憶されているのか・・・

通常自分の心の中では誰かを気にしたりもしないから、少し自分の変化が怖くなった。


***


「美樹ちゃん、おはよ!」
待ち合わせ場所でまず最初に挨拶される。
隣のクラスの由里子ちゃん。自分の中では女子Dになっている。ちなみに名前の表記も正直これで合っているのか不安なくらい。
毎日毎日同じ人と学校に行って、同じ友達と一緒に話したり遊んだり勉強したり、周りにいるのはそんなことをしている女子ばかりだ。
純粋で馬鹿で親が嫌いで好きな男子が一人はいるような、そんな培養された女の子。

そしてまた、今日もいつもと何も変わらない一日が始まってしまう。


教室に入ると、まず始めに女子の軍団が目に付いた。
いつもなら敵同士のあの人達も、今日は顔を突き合わせて笑顔で話している。
何かあったのかと考えたが私に分かるはずもないのでとりあえずカバンを席に置くと。

「美樹ちゃん! あ、あのさ、ちょっと関係ないかもしれないけど…聞いてもいいかな?」

さっきの女子の軍団に話しかけられた。もしかして、と昨日のことが頭をよぎる。
案の定、そのことだった。
「昨日の夕方にね、美樹ちゃんの家の近くで萩原と美樹ちゃんが仲良さそうに話してるところを見た子が居るんだって!
 それって本当?
 ていうか美樹ちゃんって…萩原と付き合ってるの?」
もっと長い文章で言われたけれど事情で省略。
あんな短い会話で遠い距離で、どこが仲良さそうに話しているように見えたのだろう。私としてはそっちのほうが不思議である。



「うん、帰り道で偶然会ったの。
 付き合ってないよ、ほんとに、話してただけ」


いつものように顔を赤らめて。
首を振り横で結んだツインテールを揺らして、私は返事をする。

そうだよね、と安堵の表情を浮かべる女子は確か萩原のことが好きな子だったような気がして、意地悪で「付き合ってるよ」と返事したくもなった。


だけどそんなことはしない。

(本当は、出来ないんでしょ)
心の中で誰かが言う。
(この変化のない、普通の日常から出るのが怖いんでしょ)


その言葉を否定できずに、私はまた曖昧に笑って。
新しい女子の話題についていこうと下ろしていた腰を立たせようとする。


何も変わらないのはつまらない。
だけどただの日常に慣れてしまったら
新しい刺激を探すことがとても怖くなってしまって

今はただぬるいお湯に浸かっているような
そんな状態