コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【オリジナル短編】赤い糸を結び直して ( No.19 )
- 日時: 2011/08/16 15:19
- 名前: peach ◆3Z7vqi3PBI (ID: fKZGY6mA)
- 参照: 苦しいよ、悲しいよ だから何?
「love×3」 4/4
次の日は当然学校になんて行きたくなかった。
いつもの登校の待ち合わせ場所にも、行ったらそこから質問攻撃が始まりそうで怖くていけなかった。
だけど学校には、行かなければならなくて。
仮病を使ってでも休みたかったけど、それだと逃げたことになりそうだったから。
そして教室のドアを開けると。
そこには好奇の目と、悲しむ目の二つがあった。
下神が萩澤に告白したことはもう誰もが知っていることになっていて、それに萩澤が私を好きだと言ったことも、それと一緒に伝わっているはず。
好奇の目はたぶん、これから付き合うの?とか萩原のことどう思ってるの?っていう類のものだろう。悲しむ目は、それは私か萩原のことを好きで、相手が出来てしまったことによる落胆の目。
それでも皆、私には声はかけない。
何故だか、教室はめずらしく声に包まれていない。
・・・どうして?
そう思ったとき、本当にタイミング悪く萩原が登校してきた。
「あ、森口だ。
・・・何この空気」
そして話しかけてくる。
するとやっと、固まっていた女子の軍団の一人が声を出した。
「アタシたちが聞きたいことは二つあるの。
一つ目は、胡桃が萩原のことを好きと知っていたのか
二つ目は、本当は今までずっと萩原と付き合ってたのにアタシたちに隠していて、一昨日も二人で話していたのにただ会っただけと嘘をついたのか。
・・・答えて」
勘違いされないように、また、もとに戻れるように、気をつけて返答する。
「胡桃が萩原のこと好きなんて何も知らなかったし、
それに萩原とは一昨日本当にたまたま会って少し会話しただけで、今も付き合ってないから・・・」
「萩原が美樹ちゃんのこと好きっていうのは本当なんでしょ?」
「うん。俺は森口が好き」
教室の皆を目の前にしてはっきりと言い放つ。どうして萩原が私のことなんて好きだというのか分からなかった。
嫌がらせのつもり? 今までいい子のフリをしてきたからって、その罰が返ってきたんだみたいな、そんなことのつもり?
だから私の立場を壊して楽しもうとしてるの?
ねえ、なんでこんなことするの?
「美樹ちゃんの返事は?」
聞かれるけれど、そんなことには脳がついていかない。
付き合うとか付き合わないとか、そんなことの前に、
あのままの日常がこんな簡単に壊されてしまうなんて
(あんなに刺激が欲しいって言ってたのに)
(今こんなに後悔してる)
いつの間にか、屋上へ繋がる階段に座り込んでいた。
屋上には立ち入り禁止になっているので、階段には誰も来ることがない。
「森口?」
そしていつの間にか隣に萩原が居た。
私はその言葉に答えない。だけれど萩原は一方的に話し始めた。
「俺が森口を好きだってことは本当だから。
これだけは嘘じゃない」
そこでわざわざ言葉を切ってから。
「俺さ、森口には本当の性格で教室に居て欲しかったんだよ。
周りの奴の顔色窺って過ごすのとかさ…
そういうのって、すごく疲れるじゃん?
俺は何の皮もかぶってないお前に惚れて・・・というか、お前のこと、実は少し猫かぶりのいい子ちゃんだと思ってたから、こんな奴もいたんだな、って知ってから気になり始めてた。
全部俺のエゴだけどさ、勝手だけどさ、負けないで、普通にしてて欲しいんだよ・・・」
なぜか足跡のついた天井を仰いで。
「だから、うん、皆の前で付き合うとかそういう返事、していいから。
気にしないから。これもひとつの罪滅ぼしだと思うし。
お前は保健室にいることにしといてやるからさ、考えてから、教室戻ってきてよ」
格好良く階段から床に飛び降りて、教室へ歩いていく。
萩澤はただ純粋に、何の下心もなく、素のままの私を好きになってくれた。
教室でありのままで居て欲しいと、言ってくれた。
皆がどう思ったって関係ない。
これからも変化し続けて、頑張っていこう。
あなたが、私を好きでいてくれるなら。
返事はもう、決まっている。
「私も萩原が大好きです!」
thank you END.