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Re: どこにでもありそうなありふれた日常。 ( No.17 )
日時: 2011/08/27 23:47
名前: るきみん (ID: JryR3G2V)

       第一話『天才少女』   

     その1

ふわふわと、温かい風が吹き、カーテンの隙間から日の光が入る。それが眩しくて明は少し目を細める。
明「もう朝か・・・さっき寝たばっかりな気がするけど・・・」
母「明ーもう起きなさいー、遅刻するわよー」
あーはいはい、もう起きようと思っていたところですよ。
明は起き上がってベッドから降りると、着替え始める。
チチ・・・チチチ・・・
外では小鳥の鳴き声。春の訪れを告げる優しい鳴き声だ。
母「明ーまだ起きないのー? もう起きなさいってばー」
階段の下から母親がしつこく催促してくる。全くめんどくさい母親である。

明「もう起きてるよー」
めんどくさそうに返事をしながら、明は着替えを続ける。
ワイシャツを着て、ズボンを穿いて、中学の学生服を着て・・・・・・
明「あれ? そういや俺って今日から高校生じゃん!」
うがー! と唸りながら学生服を脱ぎ捨てる。
明「高校の学生服・・・どこだ?」
ない、ない、ない。タンスにもクロゼットにもどこにもない。昨日のうちにクロゼットの中に入れて準備しといたはずなんだが・・・
明「・・・まさか、母さんか!?」
まだ諦めずに催促を続ける声の主、そう、母さん。あの人は昔から天然というか、ただのバカというか、とにかく頭が悪いのだ。
明「かあさーん、俺の学生服知らなーい?」
母「あれならクリーニングに出しちゃったわよー、そうだ、学校行くついでに取っていけばー?」
明「ナ、ナンダッテー!?」

          ☆

明「すみませーん! 早急に学生服を解してほしいのですがー!」
ガンガンガン! と、クリーニング店のシャッターを叩く。とんだ近所迷惑だが、いまはやむを得ない。
まだ朝が早いということだけあって、人通りが少ない。
明「すみませーん!」
???「あ〜も〜うるっさいな〜、わかったよ、やれだいんだろ!?」
半分ほど逆切れ気味な声がシャッターの奥から聞こえる。
???「あ〜? なんだ明か。」
明「あれ? 舞姉?」
ひょっこりと、シャッターの向こうから顔を出したのは、俺の従姉のまい姉、もとい松山舞まつやままいだ。
明「なんで舞姉がここにいるの?」
舞「就職した」
めんどくさそうにあくびをしながら答える。
明「え・・・でもこれバイトじゃ・・・」
舞「ああ?」
明「はい、なんでもないです。すみませんでした」
ケンカ、イクナイ。睨まれたりしたら素直に謝ったほうがいいよね。
舞「んで、なんで朝早くからこんなところに来てんの? てか学校は?」
明「ああ! そうだった! えーと、かくかくしかじか・・・」

舞「ふーん、ちょっと待ってな」
事情を説明すると、舞姉は呆れた顔をして店の中へと入っていった。
待つこと約1分
舞「あったぞ〜」
のろのろと舞姉が出てくる。お前の学校のことなんてどうでもいい。とりあえず寝かせろ。舞姉の顔にそう書いてある。
明「ありがとう!」
舞姉が持ってきた学生服を奪い取るように受け取ると、一目散に駆け出した。
舞「まいど〜」
舞姉は、ふわぁ、とあくびをすると店の中に入り、シャッターを閉めた。・・・それでいいのか?



明「あ〜あ、初日から遅刻かなあ・・・」
学校へと向かう坂道を見ながらつぶやく。
明「こうやって、みんな俺の普通を邪魔する・・・」
そう言いながら、天を仰ぐ。空はどこまでもまっさらで、とてもきれいだ。
が、現実逃避している時間はない。このままだと遅刻してしまう。
俺は目の前の大きな坂道と、その上にそびえ立つ私立明翠高校を見る。折れそうになる心を何とか支えて、歩みを進める。
ここから始まる、物語の階段を。