コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 〜*日替わり執事*〜【第8話更新】 ( No.25 )
- 日時: 2011/10/08 09:54
- 名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: WtPXn5LU)
第9話『執事が学校に行くと好奇心の視線を浴びるか、痛い目で見られるかのどちらかである』
「えと……校門は……」
時刻は11時。あれからお嬢様に電話をして確認したところ、お弁当を持って行くのは忘れたらしい。最初は購買でパンでも買うから大丈夫だと仰っていたが、財布も忘れたとのことなので、私がお弁当を作って持って行くことになった。そのことを提案したら、それこそ電話越しでも分かるほど首を横に振っていた。しかし家が家だけに友達からお金を借りると言うことも出来ず、結局は折れてくれた。
そして今、私はお嬢様の通う雨宮高校の近くまで来ていた。ここは蓮と緑が通う高校でもあるので場所は頭に入っているが、実際に来たのは始めて。
「とりあえず、お嬢様に連絡しなくては」
ケータイでお嬢様に電話をすると、3コール目でつながった。
「お嬢様。光です」
『あ、光さん?今どこです?そちらまで取りに行くんで』
「いえ、私が教室までお持ちしますが———」
『だ、大丈夫です!とにかく、今どこですか?』
私は校門にいることを告げると、携帯を切った。
それにしても、お嬢様は既にアメリカの大学を卒業していると聞いた。それなのに、県立の高校に通っているなんて……。いや、別に県立が悪いことではない。というか、私も県立の高校を出ているし。ただ、大学まで卒業しているのに高校に入る必要があるのだろうか?もしそれに何らかのお考えがあるとしたら、いったい何だろう。
「すみません光さん。わざわざ持ってきてもらって」
「いえ。私もちょうど書庫の整理を一段落したところでしたから」
10分後。お嬢様は息を荒くしながらお弁当を取りに来た。おそらく教室からここまで走ってきたのだろう。その額にはうっすらと汗がにじんでいた。
私はお弁当をお嬢様に渡す。ふと、視線を感じた。何かと思ってその視線をたどると、校舎の窓からこちらを見る生徒の姿が目に入った。
「あの、お嬢様。あちらの方々は———」
「へ?…………げっ。なんであんなに」
校舎を見るなり、お嬢様は顔面を蒼白に染める。よく見ると、その生徒達は私たちの方を見て顔を赤く染めるなり歓声を上げるなり……まぁ物珍しく見ていることには、変わりなかった。
「お、お嬢様?」
「…………ううん、なんでもありません。えぇ、何でもないことにしておきたいです」
「………………」
お嬢様がなにやら暗く怨念のこもった声で仰るので、私はそれ以上追求せず、お嬢様に会釈をすると屋敷へと戻る道を歩いた。