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Re: 〜*日替わり執事*〜【第10話更新】 ( No.31 )
日時: 2011/11/01 20:31
名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: 3s//keBI)

第11話『お帰りなさいませお嬢様は、ぶっちゃけ乙女の夢だったりもする』

「ただいまー」
「あ、お帰りなさいませ」

学校から帰ると、玄関で光さんが出迎えてくれた。
背筋がぴんと伸びた立ち姿は、様になっている。それでいて爽やかでとろけるような甘い笑みは、本当にずるいと思う。
……じゃっかんドキッとしたじゃないかこのやろー。

「いかがなさいました?」
「な、なんでもない」
「お荷物、お持ちいたします」
「い、良いって……」

荷物って言ったって、通学鞄だけだし。
これさえも執事に預けちゃったら、それこそブルジョワじゃね?なんて、心の中で思ってみたり。

「お嬢様、お屋敷の中へ」
「あ、そうですね」



部屋着に着替えると、光さんが待っているリビングに下りる。
すると、湯気のたったルビー色の紅茶と、彩り豊かなマカロンが用意されていた。その優雅な光景に、思わず感嘆の声を上げる。

「すごい……」
「お嬢様は紅茶が好きと聞いておりましたので、専門店に取り寄せました。もっとも、お嬢様はすでに飲まれていると思いますが……」

椅子に座り、まずは紅茶の香りを楽しむ。そしてティーカップを口元に持っていき、口に含む。ゆっくりと、口内で香りと味を堪能する。軽く柔らかながらも、こくのある控えみな香り。
一通り楽しんだ後、私は思わず甘い溜息を漏らした。

「……ふぅ」
「いかがでしょうか」
「すっっっごく、美味しい。えと、品種はキャンディですよね?」
「はい。さすがお嬢様」

私の言葉に、にっこりと返してくれる。
自慢ではないけれど、紅茶に関しては結構詳しいほうだと思う。
休日は専門店に行ったりもするし、ネットで調べたりもする。もとはお母様が紅茶好きだったのが、一緒に飲むうちに自分も紅茶が好きになっていた。

「お嬢様は、いつごろから紅茶が好きになったんですか?」
「うーん……。ここ2、3年だと思います。アメリカにいたころは、ほとんどコーヒーでしたけど。こっちに戻ってきて、お母様と一緒に飲むうちに……ってとこですかね」
「そうなんですか」

ふと、光さんが何かを言いたそうにしているのに気づいた。
アメリカにいたころ……のあたりで、なんか反応したような……。

「あの、光さん。何か言いたそうですけど……」
「す、すみません。いえ、なんでもありません」

む、ごまかしたな。
ますます気になった私は、少し強引に問い詰める。

「言ってください。私、言いたいことを言わない人ってあまり好きじゃないんです」
「そ、そう……ですか?」

その言葉を聞いて安心したのか、光さんは私の目をまっすぐに見ながら、恐る恐るといった感じで聞いてきた。



「お嬢様は、どうしてアメリカの大学を飛び級で卒業なさったのに、こちらの高校に通っていらっしゃるのですか?」