コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 〜*日替わり執事*〜【参照100突破記念SS更新】 ( No.41 )
- 日時: 2011/12/04 11:30
- 名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: 3s//keBI)
第13話『持つべきものは友だが、場合によってはいろんな意味で博識のオタクの友に相談したら何とかなるかもしれない夜』
お風呂上りの濡れた髪を乾かしながら、私はベッドに腰掛ける。そして、つい2時間ほど前に出た夕飯のことを思い出す。あれは——
……本当に光さんが全部作ったの?
というくらい、とても美味しかった。メニューはハンバーグで、中には細かく刻んだにんじんやたまねぎ。それからソースは和風おろし。それだけでもう満足!シンプルなのだけれど、どこかこったハンバーグに舌鼓を打った。
光さん……というか、執事さんがいる生活初日。正直言うと、私は自分が予想していたより馴染んでいる。自分の生活に他人が干渉してくるということに、最初はきっとぎくしゃくしながら始まるのだろうと思っていたけれど、案外そうでもない。むしろ、とても自然に馴染んでいる。
「……ま、光さんの性格からして、そうなんだろうけど」
光さんは、どちらかというと執事さんというよりは、「優しいお兄さん」というイメージが捨てきれない。微笑とかその仕草がかろやかで、そばにいると安心するような。
夕方のことがあって以来、おそらく気まずくなるのではないかと予想していた。あまり自分のことを他人にめったに話さないため、その後の対処法とか、どうすれば普通に接してもらえるかどうかなど、話す前はいろいろと考えたものだ。それが、その後光さんは何事も無かったかのように接してくれた。
……嬉しかった。
けど——
「……明日は浅倉君か」
そのことに不安を隠せないでいた。
浅倉君とは同じクラスで、それなりに遠慮がある。第一、私と浅倉君はたいして親しいわけでもない。双子の妹である花ちゃんとはよく話すけれど、浅倉君は……
「正直、とっつきにくいよね」
クラスでは友達が多く、スポーツが得意なやんちゃな男子というのが私の第一印象。
けれど、彼はなぜか私に冷たい。いや、そもそもあまり女子とは親しくないようだけれど、私のときは特に冷たい気がする。
以前、先生から頼まれた資料を図書室にとりに行く祭に、偶然図書室で合った。そのときに
「ぐ、偶然だからなっ!別にお前が心配だからってついてきたとか、ぜってぇないから!」
などと挙動不審だったのはさておき、高いところの資料が届かなかったときに頼んでみたら、即答で「やだ」と返された。ま、それはいきなり頼んでしまった私のほうが悪いけど。
「……嫌われているのかなぁ」
そんなことをした覚えは無い。それとも、なにか私が覚えてないところで、間接的に彼に嫌われるようなことをした、とか。
「うーん……」
考え付かない。と、私はケータイを手にとってとある番号にかけた。
正直、彼女に頼るのは尺だしなんか嫌だけれど、唯一頼める友人。おそらく、今頃は昨晩貯め撮りした深夜アニメでも見ていることだろう。
2コール目でつながった。
「あ、もしもし」
『もっしー。珍しいわね、あんたが電話なんて』
「ま、悪いとは思ってるけど。どうせアニメでも見てるんでしょ?」
『失敬な!この偉大なる闇を統べる王、星宮玲がアニメなど見るものかっ!』
「完全に毒されてるじゃない……」
その発言を聞くほうにもなってみろ。
「そのキャラ、めちゃくちゃイタいんだけど」
『そう?最近ハマっているアニメキャラがハマっているアニメキャラの台詞なんだけど』
「もう何言っているか分からないからスルーするけど、本題に入るわよ」
『はいはーい』
途端に電話越しに聞こえてくるテレビの音量が上がる。
そんなに私の話が聞きたくないのか。
「ちょっとあんたに相談したいことがあるんだけど」
『相談?別に良いけど。パーティーで出会ったおっさんのかつらを作った職人の隣人の元教師の孫の知人の家の半径50キロ以内の住んでいるよしみで、相談に乗ってあげるわ』
「もういっそ他人じゃない」
面倒くさい女だ。
『冗談よ。で?用件は何よ。さっさと話しなさいよ』
「あんたのせいで話せないんだけど。
あのさ、私話したことも無い男子に嫌われてる気がするの」
『それはご愁傷様でした。では、これで』
「話を終わらすな!その男子なんだけど、私が資料を図書室にとりに行こうとしたときに『ぐ、偶然だからなっ!』とか言って挙動不審になったり、頼みごとをすると即答でやだと言われるし……」
と、そこまで言うと、ふいに電話越しに聞こえていたテレビの音量が下がる。
もしかしてアドバイスでもくれるのか?そう思ってよく聞こえるように耳をケータイにくっつける。そして、
『それはぜっっっっったいにツンデr』
——ツー、ツー、ツー
「…………」
私は問答無用で電話を切ると、ケータイをベッドの上に放り投げた。
……相談しただけ無駄だった。