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- Re: 〜*日替わり執事*〜【第13話更新】 ( No.45 )
- 日時: 2012/02/25 12:14
- 名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: 3s//keBI)
第14話『ツンデレというのはパンピーには理解されにくい』
「よし、今日は時間より早く起きれた」
枕もとの目覚まし時計を確認すると、私はカーテンを思いっきり開けた。朝の暖かな日光が私を照らす。
さてどうしたものか。あごに手を当てて考える。現在の時刻は6時45分。少しはやめの朝だけど、今日からは慣れないといけない。
昨晩考えた結果、浅倉君に家事などを任せるのはどうだろうという考えにいたった。だって考えてみてよ。朝倉君、遅刻常習犯らしいし。そのうえ自分も学校があるって言うのに、人の世話なんてやけると思う? 朝倉君には悪いけど、あまりあてにできない。つまり、頼れるのは自分だけ!
「ということで、さっさと着替えてご飯食べよ」
自然と着替える手が早くなる。
……念願の一人暮らし。
昨日の光さんは本当に仕事が丁寧で、私が付き入る隙もなかった。ほとんど身の回りのことを任せてしまって、申し訳なく思う。それに、せっかくお父様とお母様もいなければ、お手伝いさんたちも全員いない。これはまたとないチャンスだ。ここできちんと一人暮らしが出来るということを証明して、挙句の果てにはお母様とお父様に「普通の暮らしがしたい」と言えるかもしれない。
「……ま、許してくれるわけないと思うけど」
それでも、私は普通の暮らしがしたい。
私は制服に乱れがないか入念にチェックをすると、キッチンへと向かった。
「あれ、もう起きたのかよ」
「……………………」
分かってた。展開的に思い通りにならないって。神様は意地悪だよね。望んでもいないことを私に押し付けて。うん、分かってたの。けど、もしかしたらって思うじゃん? もしかしたら浅倉君は仕事なんて忘れてるかもしれないって。むしろその方が良いって。
「俺、なんか何気に酷いこと言われてる気が……。って、なんでそこで壁に手をついて空を仰ぐんだ!?」
「良いの。私のことは放っといて」
「いやいや、顔を合わせた瞬間にそんなくらい顔されちゃ、俺の心のダメージ半端ないから」
「浅倉君に会った瞬間の私の心のダメージも半端ないのよね……」
「俺なんかあんたに悪いことしたのか!?」
けど仕方ない。これも浅倉君の仕事だもの。気を取り直して、私は朝倉君に笑顔で挨拶をする。
「おはよ、浅倉君」
「俺、嫌われてんのかな……」
「あ、浅倉君?」
ぶつぶつ良いながら葱を包丁で切っていた。見た目かなりホラーなんだけど。
「えーと……どうすれば。って、泣いてるの?! それ葱は葱だけど玉葱じゃないよね? え、ちょ、私に包丁向けないで、ってきゃーーー!!」
「と、とりあえず落ち着きましょう。えぇ、私たちにはそれが必要だわ」
「そ、そうだな……。悪い」
ようやく騒ぎが収まり、浅倉君は再び包丁を構えて調理を開始する。
……それがまぁ手際の良いこと。流れるような速さで、次々と料理を作っていく。そして、
「ほらよ」
あっという間に朝食が出来た。テーブルに4品が置かれる。出汁巻き卵、ジャガイモとわかめのお味噌汁、揚げ豆腐にご飯。朝食には定番の品揃えだけど……。
「見た目がきれい……」
出汁巻き卵は料亭とかにも出てきそうなほど、綺麗にくるりと巻かれていて、お皿のふちには大根おろしが添えられている。お味噌汁と揚げ豆腐には白髪葱がトッピングされていて、同じく揚げ豆腐には大根おろしが。シンプルかつ手間のかからないメニューでも、少しひとてまかかっているのが見て分かる。
「すごいね、これ。浅倉君って料理得意なの?」
「得意ってわけじゃねぇけど……」
「へぇ……。でも、作ってる姿も様になってたし」
「そ、それは……。一応曲がりなりにも執事だし。その……。べ、別にお前のために作ったわけじゃねぇ! そこは履き違えんなよ!」
「う、うん……」
なんか顔をぷいっと背けられた。うーん……やっぱり嫌われてるのかな? 昨日の夜あいつに相談しても、何の解決にもなってなかったし。あとで花ちゃんに相談しようかな。