PR
コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ガラス玉に溶けた純情 ( No.7 )
- 日時: 2011/08/25 14:50
- 名前: うめこ ◆GmgU93SCyE (ID: VmcrDO2v)
夕方の教室は好きだ。
窓から入り込む橙色の光に染まり、とても心を切なくさせる。机も黒板も、ロッカーも全て私の感情を動かしていくのだ。
淡い色のカーテンが風に舞う。グラウンドから聞こえてくる、運動部の掛け声。木が揺れ、葉が擦れ合う音。私は大きく息を吸い込んだ。
「好き」
呟いた言葉はすぐに消えた。一人ぼっちの教室、誰もいないから虚しいだけ。
ここにあなたがいたら、ここにあなたが立っていたら。この思い伝えられるのに。この私の汚い感情も、自分でも分からない感情も全部ぶつけられるのに。
それなのにあなたは呆気なくいなくなってしまった。永遠に手の届かない、思いすら届かない場所へ一人で行ってしまった。
私は一生伝わない思いを抱えたまま生きていくのだろう。
今こんなに打ちひしがれていても、いつかはあなたのことも忘れて誰かに恋をするのだろう。そしてそっとあなたのことを思い出して泣くのだ。静かに、誰にも気付かれないように。
「愛してました」
静かにそう呟く。誰にも届かない。誰も気付かない。
頬を温い液体が伝って、私はそっと目を閉じた。
/真っ暗なせかい
PR