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Re: ガラス玉に溶けた純情 ( No.13 )
日時: 2011/08/27 15:54
名前: うめこ ◆GmgU93SCyE (ID: VmcrDO2v)


 今日もあたしはため息をつく。
学校の廊下で彼を見かけたときとか、彼のその頭の中にいつもいる女の子のことを考えるときとか。ああ、あたしの恋はもう報われないんだなぁ、と思って体の奥が痛くなるような感じがするのだ。最初は涙を零しながら一人で落ち込んでいたが、もう慣れてしまった。傷つくのも、辛くなるのも。


 あたしと彼は同じテニス部に所属している。
同じ部活といっても、男子と女子で部室等は違う為、あまり接点は無い。だけどコートの向こう側に見える彼の顔とか、ラケットを振る筋肉のついた腕とか、全てがあたしをおかしくさせる。
 叶わない恋だって分かってるのに諦められないのは何でだろう。どうしてあたしはずっと彼のことをすきなのだろうか。
重いを振り切るように、あたしはラケットを大きく振る。ボールはガットの中央にあたり、大きく弧を描いてネットを越えた。


 彼の瞳に映るのはたった一人の女の子。少し茶色がかった髪に笑顔が可愛い子。彼と彼女は付き合ってて、二つ結びを揺らしながら高い声で彼の名前を呼んでた。そして彼女はあたしの親友。あたしは彼女のことが大好きだった。

 夏の終わり、大雨が降った日のことだった。
雨のせいで滑りやすくなっている道路を走っていたトラックが、外を歩いていた彼女に突っ込んだのだ。彼女は即死、それからあたしと彼の日常は壊れ始めてしまった。

 ——あの子のことは忘れて、あたしのことを見て。
そう言えるものなら言いたい。彼の隣にいたい。でもだめだから、彼はあたしのことなんか見ていないから。彼の世界の中心は彼女、永遠に彼女しかいないから。


 頬を伝ったのはきっと汗。あたしはラケットを強く握り締めた。



 /世界の中心から外れる