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プロローグ　「彼女が魔女になる日」

————夢を見た
　　　　　ずっと昔の………


「ねぇ零兎、あたし恐いよ」

彼女は泣いている
いや、泣いているのか分からない？
だって雨が降っているから
それが雨なのか涙なのか
分からなかった

彼女は震えている
自分の両手で肩を抑えながら
震えている

「あたし、あたしは人じゃない……？」

彼女が言っている意味が分からなかった
彼女は性格も人だ
ただこんなにも美しく不思議な容姿をしていなければ

ああ
なぜ気づかなかったんだろう

紫がかった長く伸ばしっぱなしのツーサイドアップで
それでいて少したれ目の黒よりの灰色の瞳
あのときの彼女の瞳は恐怖によって濁っていたけれど

彼女は明らかに
人じゃなかった………————


目が覚めた

少年「鬼灯　零兎」は起き上がった
今日は快晴、
あの夢の天気と真反対だった

—雨は嫌いだ

「れ・い・と!!」
「零兎、くれなちゃんが迎えに来たわよ」
「え、ちょっと待ってて!!」

どたばた着替えている
その時少年は思った

—雨は嫌いだ




そして


俺の記憶が正しければ
あれが昔の記憶ならば
あの夢の続き、彼女はこう言って消えた


「零兎、愛してる」