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Re: ゴースト!! ( No.2 )
日時: 2011/09/02 18:36
名前: るきみん (ID: JryR3G2V)


         プロローグ

「お、おい・・・もう帰ろうぜ・・・」
「なんだよ、びびってんのか?」
7月の初め、初夏の始まりに、二人の少年が夜の森を歩いていた。一人は背が高く、もう一人は背の低い少年だ。
「べ、別にビビッてないけど・・・」
ビビリと言われた背の低いほうの少年は、多少の不満を顔に浮かべながら、答える。
「でも・・・ほんとに出るらしいぞ・・・」
「な、何が・・・?」
背の高いほうの少年は、たっぷりと溜めて、思い切り叫ぶ。
「幽霊だよぉ!」
「ひぃ!」
バサバサ、と、木に止まっていたであろうカラスらしき鳥が、少年たちの声に驚き、飛び立っていく。
「なーんてな! びっくりしただろ?」
カッカッカ、と特徴的な笑い方をしながら、背の高い少年は背の低い少年の頭を叩く。
「べ、べつにお化けとか信じないし! 今のはお前の声が大きかったから思わず叫んだだけだ!」
そう言いながら、頭を叩いている手をどける。

ザザァ・・・ザザァ・・・
そのとき、風もないのに気が揺れ始める。まるで、侵入者を拒むように、もしくは、歓迎するように・・・
「だいたい、テストも近いってのにこんなことしてていいのかよ?」
「ああ〜? 別にいいんじゃね?」
「お前は頭良いからいいけど、俺は勉強しなきゃやばいんだぞ・・・」
しかし、少年たちは会話に夢中で気が付かない。
ザザァ・・・!
「お、おい・・・なんかおかしくないか?」
一際大きく木々が揺れたとき、ようやく背の高い少年が気づく。
「ん・・・確かに、木の揺れ方が激しいような・・・」
しかし、気が付くのが少し遅かった。森の住人は自分の庭で騒ぐ人間を良しとはしていなかったのだ。
「や、やっぱり帰ったほうがいいよ」
「ああ、そうだな・・・」
さすがに肝を冷やしたらしく、少年たちは今来た道を引き返すべく、振り返る。
「「なっ・・・」」
二人同時に絶句する。それもそのはずだ。振り返ったところにあったのは、木々が繁茂する森ではなく、完全なる、闇だった。
「ど、どういうことだよ・・・!」
「そ、そんなこと言われても・・・こっちが聞きたいよ!」
ザザァ・・・ザザァ・・・
木などは無いはずなのに、木々が擦れる音が聞こえる。視覚を奪われた状態にある少年たちにとっては、簡単に理性を失いそうな状態だ。
「た、助けて・・・」
ザザァ・・・! ザザァ! ザザァ!!
どちらかとも言えぬつぶやきは、徐々に大きくなる木々の音に消されてしまう。
「おい! 帰らせろよ! こんなところもう御免だ!」
クスクスクス・・・
木々の音に混じって、小さな少女らしき声が聞こえてくる。少年たちは何度も「ここから帰せ!」と叫ぶが、返ってくるのは笑い声だけだ。
「なんなんだよ・・・俺等が何をしたって言うんだよ・・・助けて・・・母ちゃん・・・」
笑い声がどんどん近づいてくる。どんなに泣き叫んでも、命乞いをしても、それを嘲笑うかのように近づいてくる。
とうとう、その声は真後ろに・・・

「あそぼう・・・お兄ちゃん達・・・」
「「う、うわあああああああああああ!」」

驚いたカラスは、また飛び立ってゆく・・・
そして、何事も無かったかのように、森は静まり返る・・・