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　この集落は、有名な魔女たちが住んでいるわけでもなく、どちらかというとひっそりとしているところだ。
　だからだろうか、決して強いといえない魔女などや、老人、子供しかいない。
　そこを狙ったのだろう。強盗は。

　なるほど、巧いな。

　ノゾミは草を刈っただけの粗末な道を走りながら、ぎり、と歯切りをする。

　小さな集落でも高価なものは探せば出てくるものなのだ。そして、老人や子供、弱い魔女などは、武器を使えば対等に——いや、こちらのほうが有利に、闘える。

「弱い者いじめは嫌いなんだよね……」

　ノゾミが小さく笑った。

「ぼこぼこにしてやる」

　にやり、と悪役っぽい笑みをこぼしたノゾミに、クロがビビる。

「待ってろよ、必ず連行してやる」

　ぶつぶつとつぶやくノゾミに、絶対この人魔女狩り向きだー！　と、クロは顔を紙のように白くして、心の中で思いっきり叫んだ。


　たったっ、と軽快なリズムでノゾミはクロの隣を遠足に行くのかとでも思うような、それはそれは楽しそうに走っていた。