コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 第1章 大丈夫じゃない、問題だ[吉野] ( No.164 )
- 日時: 2011/10/15 21:43
- 名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: 3QDumk2O)
「っどっへ疲れた………」
思わず謎の声が漏れてしまった。
あの後、先生は猫とともに現実からログアウトしたために、しぶしぶと俺達だけで合わせていた。
ったく、やっと真面目にやり始めたかと思ったんだけどな…。猫のせいで台無しだっつー。
…んま、部活終えてさっさと出てきたことだし、家に帰ったらひたすらPCをいじるか。
———と思いながら学校から出ると、中庭の方から楽器の音が聞こえてきた。
あの音は多分、ソプラノサックスだろうか。
—つっても、中庭で吹いている奴なんか1人しかいねーんだけどさ。
せっかくなので、俺は中庭に向かった。
in中庭。
中庭とは言うが、中庭というより小さな森ぐらいのほうが似合っている気がする。
様々な種類の木が植えられていて、夏に此処でぼーっとしていると結構涼しい。
そんな中庭の樹の上から、ソプラノサックスの音色が聞こえてきた訳で。
なんでそこなんだという質問には、ソプラノ吹いている奴が凄く残念と言うしかない訳で。
んまあ、演奏がすげー上手いのは認めるんだけどさ。
奴は目をつむり、自分の世界にのめり込むように吹いていた。
…しっかし本当にすっげーな。
あんなに澄んだ音だせるんだから、奴には才能はあるんだよなあ…。
さて、そろそろ話しかけてみるか。
音の主———日向奏に。
「おーい、奏ー」
俺がそう言うと、奏は演奏を止め、俺の方をじーっと見つめた。
「………あ、圭人じゃねーか」
ソプラノの音と同じような澄んだ声。
小麦色の肌にこげ茶色の髪と瞳は、周りの緑に溶け込んでいるかのようだった。
よく言うとイケメン、悪く言うとそんぐらいしか長所が無い残念な奴。
どのぐらい残念かというと。
「あ、圭人じゃねーか。じゃねーよ!!なんで部活サボった癖にこんなところで吹いてんだよ!!」
「いやだってめんどいし」
…とまあ、こんな感じの残念っぷりだ。
音楽の才能は他の奴よりも遥に高く、それも生まれつきの才能だというのにこいつはブラバン一のサボり魔だ。
恐らく、こいつが真面目にやれば1人でも最低で銀賞ぐらいとれると思う。
んま、こいつコンクール当日すらサボったんだけど。
「まあ、めんどいっつーのは若干冗談だけど」
「全部冗談でいてほしかった」
というか、首が痛くなるから下に降りて来て欲しい。
…ってか、こいつどうやってサックス持って上にあがったんだ。謎。
「だってお前等が悪いんだろ。下手だし」
「下手で悪かったなあ下手で!!これでも俺部長になったんだぞ!!」
「………んな、おま、部長……?!」
「なんか酷い間があったうえにその対応悪魔すぎないですか」
「いやだって、夢物語のようでさ…。悪い意味で」「今すぐこの幹切断してやろうかゴルァ」
少なくともサボり魔には言われたくない。
「———そういや、今パイレーツやってんだな」
「…聞いてたのかよ」
「まあな。しばらくずっとここに居たし」
んなところで何やってたんだろう。こいつ。
まあ、聞くのも面倒だしいいか。うん。どうせくだらないし。
「ま、頑張れよ。応援してるから」
「応援してないで部活にこいやゴルァ」「却下」
………。
駄目だコイツ、早くなんとかしないと………。
これ以上こいつと話していても無駄だと思った俺は、さっさと帰ることにした。
「部活、か」