コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

第1.5章 ( No.220 )
日時: 2011/11/01 20:19
名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: 4yuxSnKU)

‐ブラスの王‐


「———さて、合奏するよ」

「「「「はい」」」」


爽やかな好青年といった外見と声の男、月見里礼志の合図によって皆が一斉に楽器を構えた。

…のだが、約一名マイペースな人間がいた。


「あのさあ大木ちゃん。もう少し早く構えてくれると嬉しいんだけどー」

礼志はにこやかに笑いながら言ったが、大木ちゃんこと大木俊之はそれをスルーするかのようにのんびりとドラムスティックを構えた。
ちなみに、これはこの部の恒例行事でもある。数人かはクスクスと笑っているが、後は『またこのやり取りか…まあいいけど』と呑気に思っていた。

「はあ、腕はいいんだからもう少しキビキビ行動してもらいたいもんなんだけど…」

普段愚痴などこぼさない礼志だが、思わず本音がこぼれ出た。
と、そんな礼志に対してホルンの染谷涼がフォローのツッコミをいれた。

「いや、大木ちゃんにその個性とったら寂しくなるだけですって」
「まあ、そうなんだけどさー」

礼志はそう言うと、ふうと思いため息をついた。


「…あの、先生。お言葉ですがそろそろ合奏を———」
「ああ、そうだったね。ごめんごめん」

トロンボーンの真面目担当こと浜名縁がそう言うと、礼志はあははと笑って指揮棒を持った。

「よし、それじゃあやるよ。出だししっかりねー」

「「「「はい」」」」

そうして、やっと合奏が始まるかと思った、



———その時。






からんころんかろーん。



気の抜ける音が、静まり返った音楽室に響き渡る。
皆何の音かと思って音の方向をみると、そこには落ちたドラムスティック。


「———っぷははははははっ!!!!」

夏月が大声をあげて笑いだす。
暫く耐えていた他のメンバーも、その声を聞いてから堪えられなくなり、室内にどっと笑い声が広がった。

暫くしてから俊之がそれはそれはKAMEのようにスティックを拾い(途中少し滑りかけたが)、のろのろとドラムセットの椅子に座った。


「ちょwwww大木ちゃんwwwww良いキャラしすぎwwwwww」
「何なんwwwwこのネタキャラ要員wwwwww」
「わ、訳分からんwwwwwwww」

上から順に夏月、結華、圭人が思わずそう声を漏らした。
俊之はさほど気にしていないようで、自分のスティックをくるくると指で回していた。


「なんて自由人なんだ…」
「いや、センセーも人の事言えないと思うけどっ」

礼志の言葉に杏(子)がそうツッコむ。
礼志はその言葉を軽くスルーした後にこうボソリと言った。

「大木ちゃんって自由人というか、風貌が一国の王のようだよね…」

その言葉に思わず苦労人な数名がウンウンと頷く。
そして、突然礼志が頭に豆電球なマークをだしてこう言った。



「よし、これからは大木ちゃんは大木ing<オオキング>だ!!」












「ちょ、大木ingて………」
「なんてセンス…恐ろしやー」
「ちょ、おwwっをwwwきwwwんwwwぐwwwww」

「こーら皆。そんな事言わないできちんと大木ingを広めるんだよ☆」

「「「「は、はいっ!!」」」」

皆がそう返事すると、礼志は満足したようにニッコリと笑った。



「それじゃ、改めて———合奏やるよっ」

「「「「はい!!」」」」


「………ん」





この後、大木ingは見事に広まっていったというのはまた別の話。