コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 第1.5章 ( No.240 )
- 日時: 2011/11/17 19:43
- 名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: 4yuxSnKU)
‐加入フラグ………?‐
爽やかなソプラノサックスの音が外からやんわりと聴こえてきた。
部活も終了し、そろそろ帰ろうと思った矢先の事だったので、部長である吉野圭人は『あの場所』に寄っていこうと思った。
◇
「———音が少し揺れているな。ビブラートも甘い。…腕が落ちたか」
小麦色の肌の少年は、中庭にある樹の上そう呟くと、座っていた樹の枝にのんびりと寄りかかった。
それによって葉がさわさわという音を立て、鳥がその音に驚き、何処かに羽ばたいていった。
そんな映画のような風景を、我らが(?)部長がぶっ壊したわけで。
「おい、奏ー!いるんだったら部活来いやー!」
その声に気付いた少年———日向奏は、面倒臭そうな顔をして圭人の方を見た。
「部活恋濃い故意鯉乞い請い古井…」
「いや、何が言いたいんだか全く分からないんすけど!!というかどの『こい』でもねーから!来いだから!!」
謎の呪詛に圭人がそうツッコむと、奏は露骨に嫌そうな顔をした。
「だから言ってるんだろ、面倒臭いって」
「それがアレだから言ってんだろ!さっさと来いッッ!!せめてそこから降りて来い!!」
「えー………」
奏は不満げな顔をしながらも、ため息をついてしぶしぶ降りてきた。
「んでー、俺は何回言えばいいんだよ部活には行かないですよゴンザレスと」
「少なくてもゴンザレスは要らねえから!!…ってか、それなら何で入部届出したんだよお前はっ」
そう言って圭人は奏にチョップしたが、軽く避けられてしまった。
「そりゃあ、一応進学の為?」
「一応ってなんだよ。後最後の?マークが異様に不安になるんだけど」
圭人が呆れながらそう言うと、奏はふっと短くため息をついたような気がした。
「いや、さ。この部活やっても、俺の求めている『ブラスバンド部』じゃねえからさ。なんか居ても辛いだけのような気がするんだよな。…こう言うと、真面目にやってる部位のお前には悪いけどさ。
…だから、俺はやんね。俺は好きなように吹く」
———その顔は、どこか自分より遠くを見つめているような印象を受けた。
「———ああ、後面倒くせえんだよ集団行動とかっ」
しんみりした空気を慌てて変えようと、奏は慌ててそう付け足す。
圭人も戻そうと思い、奏に笑いかけたが、胸の奥の方がジンと傷んだ。
———まあ、こんな空気はさほど長続きする訳もなく。
「うをぉーいっ、何してるんだいヨッシーノ!…って珍しい!奏クンじゃアーリマセンカ!!」
と、夏月が大声を出しながらこちらの方に近づいてきた。
そんな夏月を追いかけて、吹雪と結華などもやってくる。
圭人はふと、こいつら本当に仲いいなあと思ってしまった。
一方、奏は露骨に顔を引きつらせ、吉野に早口で「んじゃもう行くわまたいつかぁああああっっ!!」などと叫んで去っていった。
夏月はあのスピードには追いつけないと判断したのか、圭人の近くで急停止した。
「どへー、奏君はっやーい」
「しゃあねえだろ、アイツ俺以外あんま話さないみたいだし」
「それはアレ?ぼーいずら「死ね」
二文字の言葉がストレートに胸に刺さったようんたらかんたらなど言いながら騒ぐ夏月を無視して、圭人は周りの景色をぼーっと眺めていた。
すると、樹の側に一枚の紙が置いてあるのに気付いた。
「———んだ、あれ」
圭人がぼそりと呟くと、夏月は圭人の目線の先を同じように見た。
その後、夏月はふらふらとその方へ歩き、ひょいと取り上げ書いてある内容を読んだ。
「えーと———、
『もしかしたらサマコン行くかもしんね。』
…だってさー。奏君つんでれ的ななにかだね」
「え、マジで?」
———楽譜は…見た事無くてもあいつなら出来るかもな。
思わずふとそう考えてしまったが、圭人の心は一気に明るくなった。
「あいつがいれば、滅茶苦茶演奏が良くなるッッ!」
少し不安だった圭人の心は、何故か一気に熱を帯び始めた。