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第1章 大丈夫じゃない、問題だ[吉野] ( No.34 )
日時: 2011/09/16 21:11
名前: とろわ (ID: .LAqCeSy)

「——なるほど成程。吉野くんが遅れちゃったから、聞きに来るのも遅くなったんだね」
「はい。すみません」

俺は気まずくなってうつむくと、先生は

「いや、いいよいいよ。今日初めてなんだし。人間間違える事なんていくらでもあるしね」

と優しくフォローしてくれた。


月見里 礼志。読み方はやまなし れいじ。この読みにくい名前を本人は気に入っているらしい。当たり前だが男です。
いつも飄々としていて、何を考えているのかよくわからない。とにかく変人。
腕は確かなのだが、練習に来る事はあまりない。あったとしてもやる気がないという残念な男だ。…先生に言うのはアレな台詞なんですが。
というか、この人は服装から大分アレだ。基本完璧に私服な服装で校内をうろついている。こいつ本当に教師でいいのか。
見た目は凄く若いが、年齢はもうすぐ三十路近く…と噂されている。意外と教員歴長いです。

——って、なんで俺は先生の紹介を長々としなきゃなんねーんだっつの。


「さてとだ。今日どうするか。とりあえず、基礎組んでおいた方がいいよね。曲吹くっていっても一年生ちゃんがアレだと思うし」
「はい、私もそう思います。今日は基礎だけで曲は吹かないほうがいいかと」
「りょーかい。じゃ、そういう事で。…まあ、少しは俺も面倒みるかっ」

先生と吹雪がどんどん会話を進めたせいで、俺が早速空気です。
さらに、吹雪が俺をスルーするかのようにズカズカと職員室を出ていってしまったので、なんだか切ないとです。

…と、そんな風に思っていると、ふと先生の机の横に大きなスーツケースが置いてあった事に気がついた。
嫌な予感がしたので、話を聞いてみよう。

「先生、そのスーツケースは一体なんですか」

そう俺が言うと、先生はニコニコしながら口を開けて

「ああ。それはスーツケースだよ」

とアホ臭い返答をした。

「いや、それを聞いている訳では無くて」
「ごめんごめん、なんとなくからかってみたかったんだー」

……安定の外道っぷり。
爽やかドSって三次元にいると心底ウザイですよね。でもイケメンだから許されるという切ない現実。
俺なんてどうせキモオタですよーだ。気にしてませんよーだ。


なんて思っていると、先生は常人では考えられない事をいいだした。

「ははは。いやー、最近うどん食べたくなってさ。明日から二泊三日で香川行ってくるんだ。だから部活頑張ってねー」





(゜д゜)


( ゜д゜)



(゜д゜)



「いやいやいやいやおかしいですよねというか何処からツッコめばいいんですかこれだってえー、えー?!」
「一度は行ってみたかったんだー、香川。うどん食べて食べて食べまくろう。うん、そうしようそうしよう」

噛みあってないとかそういう問題じゃねえ!訳分かんねえ!何でこんな時期に香川行くんだよ頭湧いてんのかこの人!
…ふと、冷静に考えてみると、そういえばこの人旅行癖が強いんだったなあと思いだした。
突然上海行ってみたりベルギー行ってみたりロサンゼルス行ってみたりと、どっから金が湧くのか不明だが、一年の半分以上を海外で過ごしているのだ。この変人教師は。

「考えたら駄目だよ吉野くん。感じるんだ」
「…もういいです、諦めます」

とりあえず、明日からは俺達で頑張るしかないのか…。
まあ、いてもこの人苦手だから気まずかったんだけどな。うん。



「そんなに落ち込まないで吉野くん。今日はいるからっ」
「…ソウデスカ」