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第1章 大丈夫じゃない、問題だ[羽澄] ( No.49 )
日時: 2011/09/18 09:22
名前: とろわ (ID: 3QDumk2O)

「アンドレ、アン・ドレー、あんこ・どれ、餡子どれ?とかかもね」
「まだ引っ張るつもりなんだ、夏月ちゃん…」


先輩達はいつものように、楽しそうに話しながら譜面台をセッティングしていた。
先輩達は仲がいい。だから、いつもみんなで話している事が多いみたいだった。
…でも、今この状態だと、聞きたいことがあっても聞きずらいんだよなあ……。
ここのリズムを教えてもらおうと思っていたんだけど。夏月先輩おしゃべり中だからな。

私———羽澄円華はトランペットの一年生だ。
これといった特徴がない。地味子さんである。まあ、別に気付けばそうなっていたから気にもしてないんだけど。
でも、先輩はいつも楽しそうだからいいなあ、とは思う。

楽譜を持ちながらやんわりと困っていると、それに気付いたホルンの藤野愛音先輩が、私に話しかけてくれた。

「どうしたの、なんか困った事でもあった?」
「え、ええと…。ここの部分がよく分からなくって……」

愛音先輩とはあまり話した事がないから、自然と鼓動のリズムが速くなっていた。

「どれどれ、見せてみて」
「あ、はい」

楽譜を愛音先輩に渡すと、愛音先輩はお得意の鼻歌を歌いながらリズムをとっていた。
…凄いなあ、多分、私と先輩の楽譜は違うはずなのに、正確に音が取れている。

そして、しばらくすると、愛音先輩は私に楽譜を見せた。

「えっと、ここはね。八分休符があってわかりづらいんだけど———」

先輩は分かりやすく、そして的確にリズムや音程を教えてくれた。
愛音先輩、とってもかっこいい…!普段は凄くのほほんとしてるのに。

「有難う御座います、先輩!」
「いやいや、礼なんていらないよ。だから、頑張って吹けるように練習してね」
「はい!」

凄く参考になったな。ちょっと緊張したけどね。
また今度、分からない事があったら聞いてみようかなと私は思った。



そして、しばらくすると。

「あ、ねえねえ円華ちゃん」

と、突然夏月先輩が話しかけてきた。
何だろう、と思って話を聞いてみると、どうやらこれからみんなで『パイレーツ・オブ・カリビアン』の合奏をするとの事だった。
それで、よかったら円華ちゃんもやる?と言われた。

ちなみに、私がさっき先輩に聞いたところはパイレーツのとある1フレーズ。
…できるかなあ、まだそこの部分吹いてないけど。

「ああ、分かんなくても大丈夫。とりあえずノリではいれば!」
「…はい」

断りづらかったので、とりあえず承諾した。
でも、不安だなあ。まだセカンドだからいいかもしれないんだけど…。




そうして、皆のパイレーツ合奏が始まった。