コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 刻の扉 ( No.26 )
- 日時: 2011/10/05 20:58
- 名前: 水鏡 (ID: ySP8nr/s)
12| 始まりの朝
朝は珍しく遅く起きた。久しぶりの安心感に包まれたから。
ここにはあたしを邪魔者扱いする、叔母さんはいない……。
そう思うと、逃げ切れた事が嬉しかった。
「シアさん、起きたなら早く準備をしてください」
シナンちゃんの声が聞こえてくる。それも何もかもが幸せだった。
「ここには、長居できない、一刻も早く先に進まないと……」
あたしは荷物をまとめて手に取ると立ち上がった。
あたし達は、昨日の夜、この森を入ってスグの木の根元で寝た。
あたし達が居ないことに気付いた叔母さん達がこの森に入ってきたら見つかってしまう……。
「今日はできるだけ遠くに行こう」ミナミがそう言う。
「そうは言っても、こんな森誰も入りゃしねぇーよ」アキが反論する。
「見つかったら、どうするんだよ」
「見つからないように慎重に行きゃぁいいじゃん」
しょっぱなから意見が合わない二人……。
ミナミは、何よりも先を急ぐ派。それに対してアキは、慎重に行動する派。
「慎重に急ぎながら行けばいいじゃん」
あたしの提案に二人は渋々頷いた。一件落着……。
これから先、こんなんで大丈夫かなーー……。
「じゃあ、行きますか」アキの声を合図に右に歩き出す。
「気を付けてね」
「わかってる」
昨日決めた順番は、先頭がアキで真ん中があたしとシナンちゃん、最後がミナミ。
「ホントにわかって……」
ミナミの言葉をアキが遮った。
「こっから先は、気をつけろよ……」
低く警戒した声であたし達に忠告した。
一気にあたし達の空気が張り詰めた。緊張で冷や汗が出る。
覚悟はしてきていたけれど……、必死に恐怖と戦う。
アキの視線の先____
注意を促す看板に残る、荒々しい爪あと。
「ロープが切れてんな……」
立ち入り禁止と書かれているロープは引きちぎられている。
「オルガか……」
オルガ……、オルガっていうのは、この国の市民が恐れてこの森に近付かない理由No.1
凶暴な生物で見た目は熊みたいで雑食で何でも食べる。
あたし達は改めてこの森の怖さを知った。