コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

11 ( No.13 )
日時: 2011/10/05 18:30
名前: すずか (ID: mNBn7X7Y)

 自慢じゃないが、俺はバッティングセンターに行ったことがある。つまり、バットを振るのは初めてじゃないの。マジで自慢じゃねーなこれ。

「ちょっとぐらい粘れよー」

 うわー全然期待してやがらねえな卓巳は。いやまあ、中学からの付き合いのくせに未だに期待するのはアホか。

「っし!」

 一応それっぽく気合いを入れてみた。バットを構える。ピッチャーが大きく振りかぶって投げたミットに収まった速え!?何だこれ!!見るとやるって全然違うのなほんと!!素人集団に本気出しすぎじゃねーか駅向こう!!

「あ、無理そうですね」
「そうだな」

 卓巳と店長に揃って結論を下された。しかしこれも否定ができない。
 せめてじっくり球を見てみるか。相手の動きをじっくり舐めるように見る。あー、どうせ舐めるように見るなら仲矢が良いなー。

「ストラーイク!」

 というわけで、じっくり見てみた。良く分からんけど変化球ではない気がした。次は振ってみよう。

「ストラーイク!スリーアウト、チェンジ!」

 まあ、トーシロが一発で当たるわけねーか。ドンマイドンマイ。

「おい何勝手に自己完結してんだコラ」
「お前も打てないくせに何でそんなに上から目線なんだよ!?」
「できないことと文句を言うことは切り離して考えるのが可能だ」
「理屈っぽく行ったところでお前も俺と同レベルだからな?」
「チッ」

 ミットを貰ってわらわらと散る。これがまた遅い。

「おーい速くしろ!」
「日が暮れるぞー!」
「やかましい、年寄りが速く動いたときの気持ち悪さを知らんくせに!!」

 何だその切れ方。
 たっぷり5分以上かかって、遂にポジションに付く。

「店長、何かピッチャーっぽい動きやってくださいよ」
「……何をすればいいんだ?」
「ほら、その白い奴ポンポンするとか」

 正式な名前は知らない滑り止めの物体を指差して、店長にリクエストしてみる。

「こうか?」
「それじゃ黒板消しはたいてるみたいです。その白い粉が特に。そうじゃないくて、上に投げてください。あ、全力じゃないですからそんな振りかぶったら駄目です」
「難しい注文をするな、雄人」
「そんな難しくないと思うんですけど」

 伝わったらしく、よくテレビとか漫画で見るピッチャーの儀式をする店長。そのハマりぷりったらなかった。流石リアル主人公。

「やっぱ店長かっこいいっすねー」
「……そうか? お前の方が見目が良いと思ってるんだが」
「それは1周ハンデ付きですか?」
「いや、特にそんなことは」

 店長の美的感覚わけわかんねー。とりあえず何か店長の脳内では俺の方がかっこいいらしい。やったー。