コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

13 ( No.15 )
日時: 2011/10/18 22:55
名前: すずか (ID: jOAGGOOx)

 ほらすげーよ向こうのベンチ、超ざわざわしてる。そりゃ今まで一度も参加してない輩が、突然とんでもない球投げたらそうなるよな。

「ほら雄人くん、お兄ちゃんウィリアム・テルでしょ!!」
「今ウィリアム・テル関係ないな!!凄かったのは全面的に認めるけど!!」

 ウィリアム・テルが弓じゃなくてグローブ持ってたら笑えてきそうだな。弓持てよ。

「新くんー、あんな剛速球が投げれるんだったら早く言ってくれたらよかったのに」
「あー……はあ」

 うわー、店長とてつもなく複雑そうな表情してるな。そりゃそうだよな、己の知らない才能が突然顕現したんだもんな、自分で引くぐらいの。
 ところで、次は店長がトップバッター。ピッチングはとんでもなかったけど、バッティングはどうだろう。

「店長ファイトー」
「新くん頼むよー」
「お兄ちゃーん!!」

 あー良いなあ、俺もあんな風に仲矢に笑顔で送りだされてー。

「お前顔が融解しかけてるぞ」
「何かその表現グロいから止めてくれねーかな。頬が緩んでるぐらいにしてくれると嬉しいんだけど」
「そんなレベルじゃなかったけどな」
「そうかい」

 顔面メルトを指摘されてるうちに、店長がバッターボックスに入っていた。バットを構える店長。ぱっと見ならホームランも余裕そうだ。実際やりかねないけど。

「打てんのかね」
「どうかな、バッティングって自分のペースでできないしな」
「ストラーイク!」

 あ、空振りした。

「そうか、弓道って自分のタイミングでやるもんな」
「ストライク、ツー!」
「だから投げるのは感覚的に似てるから上手いけど、打つ方は怪しいかも」
「ファール!」
「お」
「あー、おしい」

 1打席目でバットに当てるのか。やっぱ運動神経良いんだ店長。

「でも店長のことだし、試合中にコツ掴みそうだよな」
「ストラーイク!バッターアウト!」
「駄目だったかー」
「店長でも無理な球を俺が打てるわけないな」
「しれっと自分の失敗を正当化しようとするんじゃねーよ」
 
 そういう卓巳も打てるとは思わないがな。

「中々難しいな」
「バット引き摺って戻ってこないでください店長、それ使い回します」
「そうか」

 一旦バッターボックスへ引き返して再び帰還する店長。改めてテイク2。

「なあ雄人、あんな速い球をどうやって打つんだ?」
「店長が言います?」

 貴方の球の方がよっぽど速かったんですけど。