コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

16 ( No.20 )
日時: 2011/12/04 04:11
名前: すずか (ID: QxOw9.Zd)

 土壇場で塁に出た卓巳。ここから大逆転劇が始まる!?

「ストライク、バッターアウト!」
「ストライク、バッターアウト!」

 予定調和のように三振する惣菜屋の三村さんと着物屋の川本さん。若干士気が上がってたベンチも一瞬で冷めた。

「そろそろ帰る準備でもするかの」
「いやはや、今年も勝てんのか」

 俺期待されてねーな。いや確かに今まで1つもボールにかすってなかったけどさ。というわけで俺の番。

「雄人くんファイトー!漫画的な展開起こしてーっ!!」
「うおおおおっ!!」

 打つ!仲矢の為に打つ!!
 今までとは段違いにならない気迫という皮を被った欲望を発散している俺にびびったのか引いたのか、すげー変な顔をするピッチャー。俺今そんなに怪しかったか?
 そんなことはどうでもいい、今は打つ!仲矢に褒めてもらう!
 ピッチャーの動きを凝視する。全てがスローモーションの様に動き、ピッチャーの手から球が離れようとしたその時、奇跡が発生する!!

「きゃああああっ!?」
「!?」

 ゴスッ。

「いってえ!?」
「デッドボール!」
 
 今嫌な音がした!俺の頭から嫌な音がしたゴスッて!!何か鳴ってはいけない音がした!!!
 
 たった今発生した現象をダイジェストでお伝えしよう。
 突風が吹いた。仲矢のスカートが捲れ上がってピッチャーの視線がそっちに行って目測を誤った。目測の誤った球で俺が負傷した。以上。しかも俺は仲矢のパンツ見れなかった。
 何はともあれ、塁には出れた。とんでもなく格好悪いけど。褒められるどころか笑われるけど。

「よ、よおラッキーじゃん雄人」
「若干頬がひくついてるじゃねえか卓巳」
「気のせいじゃね、くくっ」
「今明らかに笑ったよなお前」

 現に今卓巳に笑われたわ。すげえ嘲笑われてる気がする。俺じゃねえじゃん今の失態。相手のピッチャーじゃん。

「……回ってきたな」
「きゃーっ!お兄ちゃん頑張れ—っ!!」

 俺とは比べ物にならない黄色い声援ですね仲矢さん。ちょっと悲しいですよ俺。
 しかしまあ、主人公体質の店長に回ったならもう勝負は決まったわ。

 カコーン。
「ホームラン!」

 何て王道なことをしてくれるんだろう。捻りも何もない。