コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

3 ( No.3 )
日時: 2012/04/29 21:32
名前: すずか (ID: X79pDgJG)

 ここから高校生らしい青春ストーリーが始まると思ったか!がっつりカットでもう下校中だわ!大体この話のメインステージ金物屋だしな!青春の欠片のにおいもしねーよ!金属の欠片のにおいはしそうだけどな!錆びた金属の!
 ああ理不尽だ。

「……何を1人ブツブツ言ってるんだ?」
「ふっ主人公にしか分からない悩みなのさ」
「お前、いくら頑張ってもエキストラ程度のキャラだって知ってるか?」
「分かってるようるせーな!!心の傷を抉るな!!」
「自覚があったのか」

 ああ、確かにキャラは立っていないとも。つーか、店長と仲矢がキャラ立ちしすぎて他のメンバーが薄くて薄くて。顔が良いだけでキャラって立つよな。しかも2人とも色んな意味でプラスアルファ強烈だし。ああ仲矢可愛いなあ。

「仲矢に忠告だ、何か怪しげなオーラを発散している雄人から離れたほうが身のためだと思う」
「おっけー分かった!」
「ちょっ、ダッシュは止めてください仲矢さん!!冗談とはいえ同年代の女子に猛スピードで逃げられるのは精神的にきついです!!」

 8割本気で絶叫すると、てこてこと戻ってきた。小動物っぽい歩き方がまた可愛らしい。これが萌えだな。
 仲矢を何とか呼び戻した後、そのまま金物堂へと向かう。

「何で付いてきてるんだよ卓巳」
「暇なんだよ」

 鞄から出したカメラを弄くりながら、いたって平坦な声で返答を返してくる。

「というかお前、写真部で活動しねえの?それ何のためのカメラ?」
「あー……じゃあフライパン撮るわお前のバイト先で」
「誰が得するんだよそれ」

 たとえ言い訳でも店長とかにしておけよ。まだ得があるんじゃねえか女子とかに。仲矢でも良いが。俺が得する。卓巳に提案したら、目前でフラッシュ焚かれてムスカの真似ごとをするはめになった。こいつほんとひでえ。
 視力が回復する頃には、既に到着間近だった。仲矢がガラガラと引き戸を開けてくれたので、続いて入る。


「ただいまー」
「ああ、帰ったか」

 店長はレジの番をしながらぼーっとしていた。だけど、何故かカウンターに超巨大鍋が鎮座している。周りには色んなサイズの段ボール。

「……何やってたんですか?」
「これか?」

 ちょいちょいと手招きをしてくるので、鍋に近寄る。高校生3人と若いイケメンが巨大鍋を囲んでいる構図は、相当シュールだろうな、はたから見れば。
 店長がパカリと蓋を開ける。中身のせいで、一瞬俺達の思考は停止した。

「何なんですかこれ」

 鍋の中には、更に鍋が入ってみた。店長がどんどん蓋を開けていくと、どんどん鍋が現れる。これを見させて、俺達に何を伝えたいんだろうかこの人は。あれか、常人には理解できない一種の芸術的表現なのか。実はとんでもない意味が隠されているのか。
 混乱しているうちにも鍋はどんどん小さくなってゆき、最終的に、手のひらに乗りそうなサイズの鍋が出現して終了した。

「……あの、何がしたかったんですか?」
「マトリョーシカ」
「まずはロシアに謝ってください」
「……まずは?」
「他にも色々することありますよね?」
「お、雄人がややギレだな」

 この人の行動を読める人物はきっと世界中のどこにもいない。というかいたら連れてきて行動の阻止に協力してもらいたい。