コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

4 ( No.4 )
日時: 2012/05/22 19:47
名前: すずか (ID: D7Jv2xwN)

「違う、それはそこじゃない」
「知りませんよ!!そもそも店長が品物で遊ぶから悪いんでしょう!?わざわざ包み紙まで外して面倒くさい!!」
「あ、雄人くんが切れた」
「まあ、俺でも切れるわあれは」
「そこ見てるぐらいなら手伝え!!」
「君、口を動かすぐらいなら手を動かしたまえ。それじゃあ給料は払えないね」
「お前が払ってるわけじゃねえだろ!!つーか誰の口調だよそれ!!」

 店長と俺がギャーギャー言いながら(というか一方的に俺が)悪ふざけの後片付けをしている間、卓巳と仲矢は奥で和やかに緑茶飲んでた。腹立つ。観察されてるみたいですげー嫌。あ、勿論仲矢は別よ。
 なんだかんだで、片付けには結局1時間弱ぐらいかかった。凄い無意味な時間を過ごした気がするんだけど。

「あー……何だ、すまん」
「謝るぐらいなら最初からやらないでくださいよ……」

 少しだけ決まり悪そうに、店長が謝ってきた。ほんとに少しだけだけどな。付き合い長くないと分からないぐらいの。
 悪い人ではないんだけどなあ。人を巻き込むのをためらわない節がある。

「次は包み紙を外さずにする」
「そういう問題じゃありませんやらないでください」

 前言撤回。性格が悪いっていうか一般常識が抜け落ちてるんじゃないか?
 

 お詫びに貰った饅頭を緑茶とともにもぐもぐして一服している最中。
 
「新君新君」
「あ、こんにちは」

 引き戸の開く音がして入口を見ると、ハンチング帽を被ってエプロンをした、白髪混じりのおじさんがいた。向かいの肉屋の、柳田さんである。どうでもいいけどハンチングとエプロンて恐ろしく似合わないんだな。何でその組み合わせにしたんだ柳田さん。
 ファッションセンスが素敵な柳田さんが、エプロンポケットからタッパーを取り出す。この距離ぐらい手で持って歩いたらいいんじゃね?と他人事ながら思った。ほら中身傾いてる。

「これね、嫁が作った肉じゃが。貰ってくれないか」
「ありがとうございます。頂きます」

 ぺこりと礼をして、店長が肉じゃがを受け取る。
 店長が18歳、仲矢が10歳の時に両親を交通事故で亡くし、それから店長は店を継いで仲矢を必死に育ててくれたと、以前仲矢が照れくさそうに教えてくれた。店長の努力も勿論だけど、商店街の皆さんが甲斐甲斐しく世話してくれたことも、若い2人が何とか生活できた理由の1つだと聞いた。店長はあんなのだけど、18歳にして店を継いで、高校生を1人養いながら暮らしているのは本当にすげーと思う。ただのイケメンじゃない。今では商売も手慣れて、だいぶ生活も安定してきたらしい。何か手慣れすぎてえらいことになってる気もするけど。

「それとなんだけどね」
「はい」

 ごそごそと柳田さんがポケットからチラシを取り出す。

「来週の日曜日に、駅向こうの商店街と対抗でソフトボール大会をやるんだけど、出てくれんかね?若い衆が全然いなくて」
「構わないですよ」
「そうか!いやー、新君がいるなら百人力だね。なんなら、美鈴保ちゃんも出るかい?」
「出ます!雄人くんと卓巳くんと一緒に行ってもいいですか?」
「勿論だとも。いやあ、一気に平均年齢が引き下げられたね。ここが出てくれないと平均年齢70.5才になるところだったよ」

 下手すると死人が出そうな平均年齢だな!