コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

29 ( No.43 )
日時: 2011/12/27 15:49
名前: すずか (ID: d0BfeBGF)

「作り笑いができないって言うけどね」

 相原さんがチッチッチと人差指を振る。その仕草が異様なほど違和感がないあたり、やっぱり女優なんだなと思ってしまう。ちょっとぐらい大げさな仕草だろうと、完全にものにしてる。

「規格外に演技は必要ないわ」
「何ですかその理論」

 若干納得しちゃったけどさ。

「ドラマとかならともかく、モデルなんて動く必要がないのよ?モデルで演技が必要なのは、演技をしないと写真写りが悪い人だけ。そう考えると、新なんて何してても男前なんだから言われた服を着てぼーっと突っ立っておけばいいのよ」
「……その言い分なら、風香も演技をする必要はないんじゃないか」
「あたしは女優もしてるもの。どうせなら写真でも良く写りたいために演技するのが当然でしょ。別に演技しなくても悪いわけじゃないけれど」

 その辺自信満々に堂々と言うところが大物っぽい。いや実際超大物だけど。

「はい、というわけで新のモデル人生が始まるわよ」
「たった今無事に強制終了された」

 無事に強制終了って凄い矛盾してるな。
 相原さんが溜息をついて、ジト目で店長を睨む。表情がくるくると変わるのは、ちょっと仲矢に似てるなー。
 
「何が嫌なのよ。演技できないっていう問題点は解決したじゃない」

 店長が箸を置いて、相原さんを真正面から見つめる。突然改まったような店長に、相原さんは軽く首を傾げる。

「何?」
「仮に俺がモデルになったとして、金物屋はどうする?今の生活はどうなる?勝手に俺が思っているだけかもしれないが、きっとモデルになったら生活はガラッと変わるんだろう?俺は今の生活に満足してる。だから、モデルになる必要性が見当たらないんだ」
「……そういう本音があったなら、早く言ってくれたら良いのに。何で遠慮してたのよ」

 若干ばつが悪そうに、相原さんがボソリと呟いて視線を下げる。でもそれも束の間、バッと顔を上げた時には既に笑顔だった。

「じゃあ読者モデルかつ匿名ということで」
「切り替えが早い!!」
「それなら」
「良いんだ!?」

 さっくり決まっちゃった!!