コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

43 ( No.62 )
日時: 2012/03/05 21:31
名前: すずか (ID: sursjWUQ)

「あ、ちなみにさ伊藤さん」

 伊藤さんだったわ。山田さん(仮)は虚像だったわ。

「なにー?」

 村山がゴソゴソと鞄を漁る。発掘されたものは件の商店街イベントのビラだった。

「仲矢の兄ちゃんと俺バンド組んでるんだけどさ、次の次の日曜日に商店街のイベントでライブやるから、暇だったら来て」
「マジでー!行く行く!生見たい!!」
「ちなみにバンドメンバーは俺以外イケメンだ」
「ほんとー!?めっちゃ期待しちゃうよ!しかしまー、相変わらず村山君は謙虚だねぇ」
「いやいや、謙虚とかじゃなく事実だって」

 わあ爽やかスマイル。やはり爽やかさというのは顔じゃなく人柄から滲み出てくるんだろうな。村山はほんと好青年だな、もし娘がいたら村山みたいな奴を旦那にしてーわ。

「何か言いたいことでもありげな顔だな?」
「ナンデモゴザイマセンヨタクミサン」

 ほれ見ろ、イケメンの卓巳からあふれ出るこの陰湿オーラ。黒々としてるぞ、ナマコの如く。

「ナマコをチョイスした理由を100文字以内で説明せよ。内容によってはチョキで殴る」
「何でバレてんの!?」

 何だあのオーラ、人の心を読める能力でも付加してんのか。どこの魔王だあいつ。むしろ前世魔王じゃね。あとチョキで殴るのは止めてほしい。

「加賀もライブ来ねー?人は多けりゃ多いほど嬉しいんだが」
「暇だったら行く」
「おう、期待してるぞー。ほい、チラシ」
「ん」
「あ、俺も欲しい」
「あいよ。俺ちょっとチラシ配ってくるわ」

 村山が席を立つ。貰ったチラシに目を落とすと、『このイケメンがバンドします!!!』という特大の吹き出しと共に、店長がでかでかと載ってた。これ作った奴、もうちょっと文章練れよ。

「店長プッシュしすぎじゃね?」
「まー、餌は新さんぐらいしかいないんじゃねーの」

 光もいるけど、そういえば卓巳は存在を知らないんだっけか。卓巳と光を会わせたら、とことん気が合うか合わないか両極端になりそうだ、似た者同士っぽいし。

「……あー、どっかで感じた雰囲気だと思ったら、卓巳だったか」

 イケメンで毒を吐く。卓巳の方がツンデレがない分きついけど。

「誰の話だ?」
「昨日会った商店街のとこの中学生、村山と仲矢の弟分みたいな?」
「ああ、光か」
「だから何でバレんの!?」

 完全に面識ないよな卓巳と光!?まさか俺の預かり知らぬところで友好深めてんの!?

「ネットの友人。世界ってせめーよな」

 深めてたわ。