コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

44 ( No.64 )
日時: 2012/03/29 21:26
名前: すずか (ID: NWU2GU14)

「ちーっす」
「おっす」

 卓巳が来たことで、6人全員が集まった。村山がよっ、と声を挙げて立ち上がる。

「じゃあ揃ったし、早速行きますかー」
「ああ。あまり時間も余裕がないしな」
「何時集合なんですか?」
「10時5分」
「何で集合10時にしたんですか走らないと間に合いませんよ!?というか集合時間知ってる誰かが異議を唱えろよ!!」
「いやー、まあ遅れたところで怒られるわけでもないし。じゃあのんびりでもいいかと思ってさ」

 村山がギターケースを担ぎ、店長もベースケースを担ぐ。うわぁ相変わらず何しても引く程様になるのなこの人は。世界トップクラスのベーシストです、とか紹介されても何か納得してしまいそうな謎のオーラ。
 ぞろぞろと連れだって外へ出る。既にイベントそのものは始まっているので、いつもより人通りはかなり多かった。

「結構人来んのな」
「割と伝統行事だからな。商店街総出のイベントだから、気合い入ってんの」

 いつもとのギャップに少し驚きながら歩いていると、村山の袖をちょいちょいとつまむ手が現れた。

「ん?どうした光」
「……助けてみっちゃん、何やめっちゃ見られてて居心地が悪いねんけど。俺何もしてへんのに」

 いや、普通見ると思うわ。だって今このメンバー、三分の二は美男美女だぜ。ぱっと見の見栄えが良すぎるもん、視線が集まるのは当然だろ。 

「お前は相変わらず人の視線が苦手だな」
「……敵わんわ」

 こくりと頷く光を見た周りの女子大生ぐらいの集団が、可愛いー、と軽く黄色い声をあげる。いや、確かに今はちょっとしゅんとしてるから、小動物系の可愛らしさを見出してるかもしれないけど、コイツ卓巳とタメを張れるドSだぞ、俺に対しては。他は知らんが。

「その性格でバンドとかして大丈夫なのか、お前」
「……ステージの上は別っすわ。見られるべくして見られるのは覚悟決めてるから平気なんすけど、仰山の人に勝手にジロジロ見られるのは嫌いです。せやから雄人さんこっち見んといてください」
「どうしてお前はそうしれっと俺を貶めるかな」

 何で俺こんな扱い悪いの?

「……ほんま嫌やねんけど。何で俺こんな見られんのやろ」

 無表情の中にげんなりとしたものを含ませながら、独り言を漏らす。自分の顔のレベルを理解してその言葉を発してるのだろうか。

「まさか……お前も無自覚か」
「何が無自覚なんすか?」
「光、イケメンってどんな奴だ?」 

 ぴっ、と店長を指差す。分かってるじゃないか。

「お前も同類だ」
「……あり得へん」

 頭抱え出したぞ。どいつもこいつも自分のステータスぐらい把握しておけよ。

「……雄人」
「何すか店長」
「視線が……」
「ああもうめんどくさい!!!ダッシュ!!とりあえずダッシュ!!」
「よっしゃーダッシュ!」
「仲矢さんかわいー!」
 
 これはこれで視線を集めてしまったけど、全員駆け足でそんなことに気付いていなかったからこれでよし。可愛い仲矢も見れたし。