コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

53 ( No.73 )
日時: 2012/08/01 16:57
名前: すずか (ID: 39RfU1Y2)

 繭梨さんが何とか大地さんを引き剥がす。名残惜しそうに手をぴこぴこしてた大地さんだったけど、ようやく踏ん切りがついたようで、ぴっ、と手を挙げる。当然、非常に様になっているわけだけど、さっきのアレを見たせいで以前のように純粋にかっけえ、って思わなくなってしまった。

「じゃ、そういうわけで。あ、新!繭梨に手を出すなよ!」
「出さん」
「……はっきりと否定されるのもそれはそれで腹が立つな」

 じゃあどうしろというのか。
 大地さんが厨房へ引っ込み、繭梨さんが店内の整理を始める。手持無沙汰な俺は、繭梨さんの素状を聞いてみる事にした。最近、自分が結構野次馬根性持ちであることを自覚し始めてる。

「大地さんとはいつ頃知り合ったんですか?」
「大地君とー?高校の頃だよ。仲矢君も同じ学校だったんだ」

 へえ。ここの3人は同級生だったのか。

「大地君も仲矢君も、高校ではすっごく有名だったんだよ?凄く格好良いし、しかも優等生だしね」
「でしょうね」

 そりゃあ轟いていただろうな、名前。その時の他の人の反応をちょっと見てみたいもんだ。タイムマシンとかどっかにねーかな。

「あたしは地味だったから、正直関わる事なんてないかなって思ってたんだ」
「でしょうね」
「おいこら卓巳、しれっとさも俺が言ったかのように失礼なことを言うんじゃない」

 今の「でしょうね」は卓巳だから。俺言ってないから。

「ふふふ、でもほんとに地味だったんだよ?それでね、何で知り合ったかというと……」

 にこにこしながら繭梨さんが語ること十数分。

「……そういうわけで、大地君と結婚することになったの」
「あ……甘酸っぱい!!超甘酸っぱいですよ!!!」
「うふふ、よく言われるね」

 そりゃあもうド青春な話だった。そのまま恋愛小説一本書けるぐらい山あり谷ありでキュンキュンドキドキな話だった。男の俺がそう思うぐらいだから、ぶっちゃけそのまま本にして出版したら売れると思う。