コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 日向視点 ( No.19 )
- 日時: 2012/04/22 20:59
- 名前: 紫亜 ◆N4lxHV1tS2 (ID: CyM14wEi)
- 参照: ポッキーデイおわっちまった(´・ω・`)
空は快晴。
風は緩く暖かく、 心地いい。
風に揺られて微かに動く木々。
教室の窓から見える中庭の景色の、 全てが綺麗な今日。
入学一週間目。
ここまで、 空が一度も霞んだ日は無かった。
「絶好の出陣日和だぜっ!!」
棗くんは手を天へと大きく突き上げ、 元気一杯にそう叫んだ。
彼は嬉しそうに、 ぴこぴこ飛び跳ねるように動き回る。
「出陣日和ってなんだよ……」
棗くんに軽くツッコミを入れながらも、 いつもの仏頂面とは打って変わって優しい表情をした黒田くん。
黒田くんは最後まで部活設立 (と、 副部長の座) を嫌がっていたけれど、 やっぱり自分たちで何かを始める、 というのが嬉しいようだ。
「今日みたいな日は、 何か素敵なことが起こりそうだね」
綺麗な顔して笑う西條くん。
西條くんはロマンチストなのかな。 でも、 ボクもそう思う。
…西條くんが笑ったら、 六組の生徒皆が一斉にこっち向いたんだけど ……西條くんって、 人気者だったんだ。
「部活申請書、 受理されるといいね!」
*
「えっ!? お、 俺が行くの!?」
「いやお前部長だろ?」
「い、 いやそうだけどさあ……たくとっ!」
「ええ、 ボク!? えっとえっと、 西條くんっ!」
「はぁ…… 中に入る時は皆で行けばいいんだから、 とりあえず部長先頭で行けばいいんじゃないかな?」
「そ、 それもそうか…… ナイス竜夜っ! お前らちゃんとついてこいよ!?」
「う、 うん! 西條くんナイス!」
「ああ、 ありがとう」
「うし…… いくぞ? し、 し、 失礼しましゅっ! ……あっ……」
職員室前。
中学校より縦にも横にも大きい職員室の扉の前で、 ボクたちは重大なことに——数分前に気がついた。
たった今、 ぜんぶ解決したんだけどね。
遡ること数分前。
*
ボクたちは四人横並びに、 中学校とは高さも傾斜も全く違った階段を、 ルンルンと気分に身を任せて下りていた。
時折先輩や先生が通るので、 勿論そのときはちゃんと避けた。
黒田くんのクラスのある三階から降りてきた階段を全て降り終えると、 今度は教室棟から管理棟へと繋がる通路を通らなければならない。
春のにおいのする中庭横の通路を、 まだ散り終えてない桜の花びらと一緒に歩いていたとき。
記入漏れのないよう最終確認をしていた黒田くんが言った。
「……なあ、 俺たちの顧問って…誰?」
スッと。
まさにそんな感じだろうか。
全員がスッと足を止めた。
「……顧問か」
「……顧問ねえ」
「……そういえば、 この部活顧問いないね」
…………そして、この回答である。
「はぁ!? いないの!? いや、 昨日書いてるときに気付けなかった俺も悪いけどさ!」
全員の気が、 どんどん消沈していくのが分かった。
これが意気消沈ってやつですか?
皆して俯いてしまった。
…いや、 棗くんはすぐにいつもの調子を取り戻して、 足元の桜を数えだしてしまったけど。
真面目な黒田くんと西條くんが、 考え込んでしまった。
むーん、 この空気をどうやって壊そうか。
「中嶋先生は? 去年まで写真部の顧問だった人!」
1. とりあえず提案。
「写真部はつぶれちゃったみたいだし、 今はなんの顧問もしてないみたいだよ!」
2. 現状提示。
「あの先生、 結構やさしそうだし!」
3. そしてゴリ押し!
4. 結果。
「じゃー拓斗の言うとおり、 中嶋先生とやらに頼んでみっか!」
5. 完了!
「おっと、 あんなところに中嶋先生が!」
「行け、 者共!! 出陣じゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「えっ!? なになになになに!!?」
*
廊下走ったら怒るなんて、 やっぱりこの人も先生なんだね。
「おーいいつぞやの新入生。 顔に出てるぞー」
「えっ! また!?」
中嶋先生は頭をぼりぼり掻きながら、 今日もまた適当に着崩した服装でそう言った。
ちなみに今日の髭は二日前くらいに剃ったのだと推測。
生ぬるい風の吹く渡り廊下を抜け、 走りついたところは丁度、 角を曲がると職員室へ行き着く通路だった。
丁度いい。 とっても丁度いい。
皆もそれに気付いているらしく黒田くんは棗くんに話を促す。
中嶋先生もその様子に気がついたようだ。
「先生! 俺たちの部活の顧問になってください!」
「うん? 何部?」
待ってました! そう言わんばかりに棗くんは目を輝かす。
昨日皆… ううん、 正確にはボクと棗くんが楽しくなっちゃって決定した部活名。
本邦(?)初公開だよ!
「先生、 聞いてください!
学生に必須な T ・ O ・ N ・ G …… それをする部活、 『TONG部』です!」
T たべたり
O おしゃべり
N 寝たり
G ゲームしたりする
部 部活。
TONG部!!
ボクと棗くんは、 先生のリアクションを待った。
黒田くんと西條くんは恥ずかしいみたい。 昨日も、 最後まで反対していたのがこの二人だから。
『名乗るのが恥ずかしい』 ……って。
ボクたち ( TONG部賛成派 ) はわくわくしながら、 背の高い中嶋先生の顔を見続ける。 ……首が疲れてきた気がするけど、 そんなの関係ない!
だけど、 先生のリアクションは予想以上に軽かった。
「いいんじゃない? とんぐ部。 なんかトングを研究する部活みたいだけど」
「ということは…… OKってことですか!?」
「え、 いや……」
「よっしゃあぁぁぁあぁああぁ!! お前ら! 顧問ゲットだぜぇぇぇ!!」
「これで必須項目全部埋まるね!」
「中嶋宗弘… っと…… よし、 これで提出出来るぞ!」
「やった!」
「……まあ、 いいか」
ボクたちは、 僕たちの高校生活の第一歩を進んだ。