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Re: 【29話更新♪】黒血フォルクロリカ【キャラ絵うp3!】 ( No.372 )
日時: 2012/01/29 14:53
名前: あんず (ID: S86U/ykR)
参照: http://www.kakiko.info/oekaki_bbs/data/IMG_001229.jpg


++ 31:小さな友情はセカイを飛び越す ++


「本当にいいのか?」

フォル先輩が再度、ガイトに訊ねた。

「ああ、皆が俺達のために命を張ってくれたから今生きていられてる。
 和三紋黒光の件はせめてものお礼だ。」
「...ありがとう」

今私が手に抱えているのは妖刀『和三紋黒光』。
私たちはそれの回収の為に人間界に向かい

色々な体験をした。


「でも...そんな悪いよ...。これ黒明家の家宝なんでしょ?」
「...大丈夫。いくら大切な宝でも命よりも価値はない。
 守ってくれる人がいない状況でまた襲われたりしたら困るしな」

くすりと笑うガイトの顔にはほんの少しだけ悲しさが映っている。

「あ、そうだ」
「?」

それに気がついたのかユウ先輩が手を挙げた。

「その妖刀の能力の部分だけを持ち帰れば良いんじゃないか?」
「それいいね!」
「さっすがユウちゃん!ナイスアイdほべぁ!」
「むやみに飛びつくな!!」

散々チェス先輩を蹴りまくった後、ユウ先輩が極上の笑顔で微笑む。

「俺も色々人間界で学ぶことが出来て嬉しかった。ありがとう。」
「「「「....」」」」

帽子を取っての深々としたお辞儀
普段人目に晒されない美しい髪がきらきらと輝いた
→男性陣が「ほぁ....」ってなる

「どんなことが分かったのか?」
「う〜ん例えばナンパの撃退方法とか...」

この人が言うと真面目に怖い。
チェス先輩の頬が引きつるのが分かった。


●○


「帰るぞエミィ。」
「...」

それぞれの泊まっていた場所から荷物も全部運び出し終わり
後は帰るだけである。

最初の頃、早く任務を終わらせたがっていたはずなのに
何故か乗り気がしない。

「借りたTシャツとか返してきます」
「皆待ってるから早くしろよ」
「はい」

コンコン
「どうぞ〜」

思い出すと色々なことがあった。
実際この部屋が戦場だったし。

中からアカネが出てくる。
ヤンデレと称されるほどガイトのことが好きで、一途で、真っ直ぐで。
急に二人で話したことを思い出してしまう。

夜、部屋の中でずっと喋っていたっけ。

でも
もう会えない。

「うう........」
「え?何どうしたの??」

涙腺が緩み涙が出てきてしまった。

「...服とかかしてくれてありがとう。居候させてくれてありがとう」
「何よイキナリ...」

「...アカネ!私もう帰らなきゃいけないから....!」
「人形聖界ってとこ?」
「うん」

必死に涙をぬぐう、でもまた溢れてくる。

「魔法使いの存在を信じてくれてありがとう。私すごい嬉しかった  
 よ。」
「エミィ........ホントに帰っちゃうんだね........」
「ごめん...でもアカネのこと絶対忘れないから!」
「私もだよ!」

アカネも泣いていた。

「なんだよ...湿っぽいのは嫌いなのにさ....」
「えへへ、じゃあまた会おうね!」
「あんたのこと死んでも忘れないよ!」

そう誓い合ったとき、文月先輩が瞬間移動で現れる。
「先輩...どうしたんですか?」
「...はぁ.....あなた達のことだからこうしてると思っていました。」
「え?」

「人間界での記憶は消されます」

「嘘...でしょ...」


そんなことありえない!
第一魔法をかけられても覚えていれば済むことじゃない!

そんな私の気持ちに気付いたかのように文月先輩はたしなめた。

「無理よ、学園長の霊力は絶対です。戦いの記憶、その過程のみは残さ
 れるけれど後の友情とかは残らないの」
「そんな...でも人間の方は覚えてるんですよね!」
「人間には何も残されない。
 そんな人間いなかったように私たちが現れる前の生活が続く。」
「....」

「いつか必要になるときが来たらもどされるんですか?」
「...さぁね。でも友情では世界を救えない。
 行きますよエミィ」

このままでは終わらせたくなかった。
私の視線を感じ取りアカネが顔を上げる。

「これを持っていて。」
「...いいの貰っちゃって?」
「勿論、これは私がこの世界に一瞬でも存在した証。
 捨てちゃダメだよ〜」
「...うん!」

ようやくアカネが笑顔になった。

「私も見送りに行くから。それまで手をつないでいこう。」


○●


最初に私たちが落ちてきた地点は確かここだった。

「さぁ準備はいいか?」
「「「「はい!」」」」

アカネとガイトが私たちを見る。
その手には私があげたものがしっかりと握られていた。

「じゃあ行くぞ!黒魔法第三番『空間移動』」


辺りが一瞬暗くなる。
落ちる視界の片隅で私は声を聴いた。

小さな声だけど
確かに響いていたんだ。


「ばいばい。またいつか会う日まで。」

たった一週間ほどの友情が再び世界をつなぐのか。
それは誰にも分からない。

神様さえも
知らないセカイ—。




++ 人間界実習篇 終幕 ++