コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。 ( No.11 )
- 日時: 2011/10/08 21:57
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
- 参照: 実は桐生玲は山下愁でしたってオチです。ゴメンなさい。
第1話 ウェルカム、黒影寮。
昴さんとの住民紹介は続きます。
次に示されたところは、睦月さんがいる部屋の隣——『篠崎蓮』と殴り書かれた表札が下がっていました。
昴さんは臆さずに、ドアをノックします。
「何の用だ?」
部屋から出てきたのは、銀髪の男の子でした。
私と同じような銀髪を持ち、瞳は黒。ニット帽をかぶって髪を後ろに束ねています。
男の子は私を見ると、怪訝そうに眉をひそめました。
「誰だ、こいつ」
「神威銀ちゃん。珊瑚さんの姪」
男の子はふーん、と頷くと、部屋に戻ろうとしました。
昴さんは笑顔でドアを思い切り拳で叩きます。ドンッという音がしました。
いきなりやられるとびっくりしますね。ですが、相手の方がもっとびっくりしていました。
「ひっぎゃぁぁああ!」
悲鳴を上げますと、ぴょんと飛びあがってベッドに飛び込みます。
ぼわぼわになったあの白いのは——尻尾?
「肉体変化(メタモルフォーゼ)って言って、常に猫モードなんだよね」
昴さんはそう言うと、男の子のニット帽を外しました。
ニット帽の下から現れたのは、白い猫の耳。ピンと上に向いています。
涙を目にいっぱい溜めた男の子は、昴さんからニット帽をひったくってかぶり直しました。
「ざけんな、この馬鹿! お気楽野郎! 鈍感!」
「生意気な口だなぁ」
昴さんは笑顔で男の子の尻尾を掴むと、指で軽く弄びます。
男の子はビクッと体を震わせると、尻尾を昴さんの手から引っ張り、部屋の隅へ逃げました。
「こいつの名前は篠崎蓮。肉体変化って言って、動物に変身できるんだ」
「そう、なんですか」
確かにノートを確認すると、蓮さんという人の能力欄には『メタモルフォーゼ』と書かれている。
漢字表記ではないんですね。面倒だったのでしょう。
「う、うるせぇな!! 馬鹿にするんじゃねぇぞ!!」
「馬鹿になんかしてないよ。肉体変化でも別にいいじゃん」
蓮さんはギャーギャーと昴さんに対して何か言っていましたが、昴さんは物ともせずになんなくその台詞をかわします。
すると、その騒ぎを聞きつけてきたのか、1人の男の子がドアを思い切り蹴りました。
蓮さんはそれに驚いて、また尻尾をぼわぼわに逆立てて飛び上がりました。
「うるさいな……。静かに出来ない訳?」
その男の子は、静かに怒りました。
黒い髪は少しだけ天然パーマっぽく、くるくるってなってます。片目は隠れていて不健康そうな子でした。
男の子は私を睨みつけると、昴さんに誰、と問いかけます。
「神威銀ちゃんだよ」
「あぁ、珊瑚さんの? 管理人代理にでもされたんだ。哀れだね」
男の子はふわぁ、と欠伸をすると自分の名前を名乗りました。
「僕は祠堂悠紀。よろしくね」
「フン。坂口玲が何を言う。駄作しか書けねぇ小説家め」
部屋の隅で蓮さんがぼそりと言いました。
悠紀さんは蓮さんを睨みつけると、スゥと息を吸い込みました。
「『クラッカーをこの場に』」
悠紀さんがそう言うと、悠紀さんの手にはクラッカーが握られていました。
それを悠紀さんは躊躇なく引っ張りました。
パァンという鋭い音がして、蓮さんは天井に届くぐらいにジャンプしました。
「ハン。ビビりが」
悠紀さんは鼻で笑うと、向かいの部屋に戻って行きました。
あぁ、悠紀さんは言葉を具現化したり操ったりする『言葉使い』でした。