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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。企画・もしも彼らが○○だったら ( No.115 )
日時: 2012/01/04 11:47
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: 2012年もよろしくお願いします。バイ山下

第7章 英学園の愉快な文化祭


 〜空華視点〜

 あー、邪魔だなこの女。
 さっきからまとわりついてくるこの女。記憶を探ると、どうやら先輩の彼女らしい。
 言っちゃうと、この女は俺様の苦手なタイプだ。好きなタイプはスタイルがよくて、大人しめで落ち着きがある子。または色気がある年上でも可。

「あのさぁ。お前、先輩のところに行かなくていいの?」

「いいのよん。だって君、カッコいいんだもん。1目ぼれって奴?」

「そうかい。そりゃ嬉しいねー」(限りなく棒読み)

 メチャクチャ嬉しくないけど、とりあえず笑顔を作っておく。
 が、事もあろうかこの女、俺様が着ているTシャツの上に手を這わせてきた。気持ち悪い。
 一体何が目的なんだ。逆ナンか。

「空華さん!!」

 と、そこで最悪のタイミングで銀ちゃんが屋上へ入ってくる。
 神様。そんなに俺様が嫌いかい?

「どうして、空華さん……」

「テメェイケメンンンンンンン!! 銀ちゃんという存在がありながら他の女に手を出すとは……! 銀ちゃんはあたしがもらうぞ、いいのか!」

「私は空華さんのものではありませんし、羅さんのものでもありませんよ?」

 銀ちゃんがジロリ、と言った様子で羅ちゃんを睨みつける。
 ハハ〜ン。大体は予想できた。大方、友達に誘われて断れなかったんだな。それで来た結果、黒影寮の誰かしらに俺様を探せって言う命令を受けた。
 でも、何でこんなに慌てているのかは不思議だけど。多分、先輩の話を聞いたんだろうな。
 俺様はため息をつき、しつこいこの女に笑顔を向けた。

「ねぇ、邪魔だからどっか行ってくれない?」

「え——」

 答える前に気絶させてしまう。手刀を首筋に叩きこめばすぐに気絶してしまった。
 女を羅ちゃんへ、無理矢理押し付ける。

「この子、3年フロアに置いて来てくれない? 落しものっぽく」

「ハァ? 何であたしがイケメンの言う事——」

「羅さん、私からもお願いします」

「おっけー、銀ちゃんが言うならそうしてくるわ!」

 銀ちゃんの言う事なら聞くんだ。あとで見返りを求めてきそうだけど。
 で、羅ちゃんが去ったあとの屋上は、俺様と銀ちゃんの2人だけ。気まずい。

「どうして、空華さん……」

「どうしてって?」

「あの女の人、ナンパしたんですか?」

 あぁ、あれ?

「あの女は勝手についてきたの。適当にまこうって思ったらべったりくっつかれて。だから銀ちゃん達が来てくれて正直助かったんだよ?」

 そう答えると、銀ちゃんはホッとしたような表情を作る。
 何で、俺様にそんな表情を見せるの? 期待しちゃうでしょ。

「ねぇ、銀ちゃん。何で俺様を探してたの?」

「翔さんに頼まれたんです。もう休憩時間は終わりですから、早くお店に戻ってくださいって」

「ふーん。やっぱり」

 翔の差し金か。面倒な事を。

「ねぇ、銀ちゃん。やっぱり、翔の事が好きなんだよね」

「ま、またその話題ですか。答えませんよ! 別にいいじゃないですか、誰が好きでも!」

「確かにそうだけど、さ」

 顔を真っ赤にして目をそらす銀ちゃん。
 ばーか。それだけで分かっちゃうんだよ、俺様。何年も女の子を見続けてるんだから、何年も女の子に恋をしてるんだから。
 その反応を見せるって事は、当たりだ。

「ねぇ、俺様じゃダメなの?」

「……え?」

「翔を好きにならないでよ。俺様を好きになってよ」

 離れた銀ちゃんと少し距離を詰める。
 だけど、銀ちゃんは俺様から距離を取った。そんなに嫌か。

「ねぇ、知ってる? 俺様は忍びだよ。忍びっていうのは、主は誰でもいいって言う考えを持ってるからね。もちろん、俺様の家もそう。主は誰でもいいんだ」

「ど、どういう——」

 俺様は銀ちゃんの下に跪き、手の甲に軽いキスを落とした。
 ねぇ、銀ちゃん。

「俺様は、違う。銀ちゃんの事が好きだから守る。ラブ・ポーションの時だって、最初の時だって。重いと思うけど、俺様は銀ちゃんの為なら死んでもいいって思ってるよ。それだけ本気だって事、覚えておいて」

 ニッコリと銀ちゃんに笑いかけ、俺様は屋上のフェンスを飛び越えた。そして空を舞う。
 最後に見たのは、混乱している銀ちゃんの顔だった。

 〜銀視点〜

 羅さん、どこ行っちゃったんでしょう。
 それより、あの時の空華さんの言葉が頭から離れません。

『翔を好きにならないでよ。俺様を好きになってよ』

『俺様は銀ちゃんの為なら死んでもいいって思ってるよ』

 いつもの空華さんじゃないみたいです。
 全てを見透かすようなエメラルドグリーンの瞳。キスされた手の甲が焼けるように熱いです。

「きゃぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!」

 すると、どこか遠くで悲鳴が聞こえました。
 何でしょう。行ってみましょう。
 ぼんやりとする頭で考えつつ、私の足は自然とそちらの方へ向いていました。

「あれ、銀ちゃん?」