コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。 ( No.12 )
日時: 2011/10/09 21:48
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: 実は桐生玲は山下愁でしたってオチです。ゴメンなさい。

第1話 ウェルカム、黒影寮。


 次に昴さんに案内されたのは、蓮さんの隣の部屋。表札には『二条蒼空』とお世辞にもきれいとは言えない字で書かれていました。
 昴さんは、そのドアをノックします。
 部屋の主はすぐに返事をしました。

「何ー?」

「管理人の神威銀ちゃん。蒼空、挨拶して」

 蒼空さんはドアを開けました。
 黒い髪に青い瞳。どこか女の子のような顔立ちを持つ人でした。翔さんには負けますが、こちらも可愛らしいです。
 どちらかと言いますと、翔さんは和服が似合う感じがします。対する蒼空さんは洋服ですね。

「あ、君か。初めまして、二条蒼空だぜ!」

「神威銀と言います。精一杯管理人としての仕事を努めますのでよろしくお願いしますね」

 明るい笑顔を向けられたので、こちらも笑顔で返しました。
 すると、蒼空さんの向かいの部屋が開きました。中から琥珀色の髪を持つ男の子が出てきました。
 左目に泣きほくろがあります。可愛らしい容姿ですが、翔さんや蒼空さんのように女の子、とは言えない気がします。どちらかというと少年です。

「昴君。誰、その子」

「新しい管理人の神威銀ちゃんだよ」

 昴さんは私の名前を口にします。私はその男の子に頭を下げました。
 男の子はにっこりと笑うと、私の手を握ってきました。

「よろしく。僕は国枝つかさ、分からない事があれば何でも訊いていいからね」

 つかささんはそう言いますと、部屋に帰って行きました。
 そのとたん、蒼空さんと昴さんが同時にため息をつきました。一体何があったのでしょう?

「よかったー、つかさがキレなくて」

「え、キレると何かがあるんですか?」

 私は2人に問いかけました。
 2人は顔を見合せますと、私にノートを見るように促します。
 ノートを開き、つかささんのページを確認してみます。書かれていた能力は『狂戦者』——。

「そうやって書いて、バーサーカーって読むんだ。キレると見境なく人に襲いかかるから気をつけて」

 昴さんはそう言いますが、私はそんな感じはしませんでした。
 つかささん、いい人だと思うんですけど……。

「さて、あとは1人なんだけど……。悪い蒼空、ついてきてくれないか?」

「ん? いいけど、どうしてだ? 昴は副寮長だし、俺がついて行かなくても結構強いだろ?」

 蒼空さんは頭の後ろで手を組んで言います。
 昴さんは苦笑いを浮かべると、頬をポリポリと掻きました。そして言葉を紡ぎます。

「最後の奴、空華なんだよね?」

「あ、そ。じゃあついて行くわ。俺も銀ちゃんが心配」

 心配? 何が心配なんでしょう。
 そう言えば、空華さんと言えば私が1人の時に隣にいてくれた人です。とても優しい人でしたけど……。
 昴さんは蒼空さんを連れて、端の部屋へ来ました。
 表札には『王良空華』と書かれています。この先に空華さんがいるんですね。

「空華、いる?」

 昴さんは緊張した表情で、ドアをノックしました。
 返事はありません。留守のようです。

「絶対居留守だ。俺、姿見たもん」

 蒼空さんは唇を尖らせました。
 昴さんは呆れたようにため息をつきますと、ドアノブを捻ります。
 部屋の中は——


「うぇ、昴?」「きゃん」


 ベッドの上に転がる半裸にされている女性と、眼帯の男の人。眼帯をしている方の人には見覚えがあります。
 空華さんです。

「「「…………」」」

 その光景を見た瞬間に、私達の動きは止まりました。
 何でしょう、この裏切られた感は。

「いやぁ……ハハッ。彼女がどうしてもって言うからね?」

 空華さんは言い訳じみた事を言いますが、今の昴さんには何を言っても通用しなさそうです。
 何故なら、昴さんの表情は完全に引き攣っていたからです。引き攣った笑顔を浮かべていました。

「……空華。いいよ、続けてて」

 昴さんは言いました。とてもとても、静かに。
 蒼空さんは何かを察したのか、ゆっくりとした足取りでどこかに行きました。行き先は蒼空さんの隣の隣の部屋——翔さんの部屋です。

「翔、呼んでくるから」

 次の瞬間、廊下を焦がすかと思うぐらいに炎が噴きでました。