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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。企画・もしも彼らが○○だったら ( No.126 )
日時: 2012/01/07 22:01
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第7章 英学園の愉快な文化祭


 〜視点なし〜


 それは過去に、彼らが見た光景だった。

「え、珊瑚のババアが踊るのか? 英祭りのファーストフィナーレで?」

 ファーストフィナーレと言うのは、1日目の文化祭が終わるとステージで開催される催しものだ。来た他校生や父兄の方でも見れるステージである。
 ちなみに2日目に行われる後夜祭は、生徒限定で派手に開催される。
 空華は怪訝そうな表情で訊き返す。

「珊瑚のババアって踊れるのか? つか、年齢何歳だよ」

「俺が知るかよ」

 対して冷たい反応を見せるのは、黒影寮の寮長である東翔だ。見た目の年齢は高校生っぽい若者だが、実際のところ生きている期間は長い。1700年だと言う。
 翔はため息をついて答えた。

「踊れるんじゃねぇのか? 俺は知らねぇけどよ」

「でも、あいつが踊るところなんか見た事ないぞ」

 空華に同調してきたのは、重力使いである二条蒼空だ。

「さぁな。あいつの娘も参加するらしいぞ?」

「娘? あいつにいるのは息子だろ。ほら、白刃先輩。3年の」

 副寮長の椎名昴が言う。
 だが、翔はそれに否定の意を見せた。

「何でも前から預かっている従妹らしいぞ。知ったこっちゃないがな。興味ないし」

「女の子に興味ないと——子孫、作れないぞ?」

「永遠の時を刻む俺に言うか、それ?」

 翔は昴にプロレス技をかけつつ、ニコニコ笑いながら問いかける。
 腕の中で昴は悲鳴を上げた。
 空華は「娘? 誰それ。そんなのいたんだ、あのババア」とつぶやいていた。

 ——それから見たのは、全てが輝いた舞台だった。
 ——それから、彼らの恋は始まったのだろう。

***** ***** *****

 〜空華視点〜

 去年のこの時、俺様は彼女に恋をした。
 きらきらと輝く夜空を背に、彼女は優艶な舞を見せる。持った鈴が綺麗な音を響かせて、彼女の綺麗な髪がふわりと空を踊る。
 その時初めて、この学校に来てよかったって思った。
 そして、神様にも感謝した。

「今年はどうだろうなー」

「そんな話は聞いてないしな」

 俺様の声に、翔が平然とした声を返す。

「何さ。翔ちゃんだって楽しみにしてたのに」

「……おい、昴。1回殺してやる」

「ぎゃー?! 何で?! 俺、何も言ってない——!!」

 問答無用で昴が翔に締められていた。
 おいおい、ファーストフィナーレ前にそんな喧嘩をするなよ。踊るんだったらどうするんだよ。
 って事は、珊瑚のババアはこの時だけ緊急帰国か? へぇ。
 俺様達は全員揃ってファーストフィナーレが行われるステージへと向かう。そこにはたくさんの人だかりが出来ていた。

「あれ。羅ちゃん達じゃん」

「げ。イケメン……」

 俺様達を見るなり、羅ちゃんが顔をしかめた。そんなにイケメンが嫌いか。
 白亜ちゃんが「やっほーす」と言う。傍にいたひかげちゃん? は、もさもさと焼きそばをほおばっていた。

「ファーストフィナーレ、見るんだ?」

「折角ッスし。それに、さっきから神威さんが見当たらないんス」

「銀ちゃんが?」

 そうッス、と頷く白亜ちゃん。

「さっきから電話をかけてるんスけど、何かつながないんスよ。どうにかならないッスか」

「いや、どうにもならないけど」

 まさか、もう帰っちゃったとか?
 今年は見れないか。
 ブザーが鳴り響き、周りの証明がステージへ集中する。ステージに立っていたのは、銀髪にたくさんの髪飾りをつけた、着物の女だった。背中しか見えないけど。傍らには白刃さんの姿も見える。今年は黒い着物だ。
 女は手に持った緋色の扇子をゆらりと持ち上げた。

「君が見た——この空のどこかに響き渡る——我が歌声は、波のように」

 聞き覚えのある、声。
 女はこちらを振り向き、ニッコリと笑う。
 銀ちゃんだ。

「な、何あれ?! 可愛い! マジ可愛い!!」

 羅ちゃんが興奮したように言うが、銀ちゃんには聞こえてないみたいだ。

「ゆらりゆらりと舞い上がれ——恋を綴ったこの歌よ」

 銀ちゃんはほほ笑みながら、舞い踊る。
 あぁ、やっぱり見れた。今年も。
 神様、ありがとう。

 俺様——本当に銀ちゃんに会えてよかったよ。